2023年 05月 27日
小松お旅まつり 2023 京町『義経千本桜 河連法眼館の』其の二
はじまりは 大和国に千年功ふる雌狐 雄狐
二匹の狐を狩り出だし その狐の生皮を以て拵へたるその鼓
日に向かふてこれを打てば 水を発して降る雨に 民百姓は悦びて 初音の鼓と名付け給ふ
その鼓は私の親 私はその鼓の子でござります
鼓の子じゃと言いやるからは さてはそなたは狐じゃな
はぁあああ・・・
雨乞いのために両親を奪われたその時は まだ親子の情も悲しみもわきまえぬ仔狐でした
親に不孝な子があれば
ヤイ 畜生よ 野良狐と人間は仰いますけれど・・・
鳩の子でさえ 親鳥より枝を下がつて礼儀を表します
カラスが子を育てるのは 育ててもらった親カラスへの孝行
なんぼ愚痴無智の畜生でも 孝行といふ事を知らいでなんといたしましょう
知らいでなんと いたしましょうぞいな・・・
とは言ふものゝ親はなし またも頼みはその鼓 まだこの上の孝行と思へども
五臓を絞る血の涙 火焔と見ゆる狐火は 胸を焦する炎ぞや
もとの古巣へ帰ります
わが親鼓に打ち向ひ 交はす詞の尻声も 涙ながらの暇乞ひ
人間よりは睦まじく
去年の春から付き添ふて 丸一年たつやたゝず
去ね とあるとてなんとマア アツと申して去なれませふ アツと申して去なれましょうぞいな
大和国の源九郎狐と言ひ伝へしも哀れなり
わが君様 お聞きなされましたか? 聞いた聞いた
さては人間にてはなかりしか 不憫なことの身の上じゃなあ
頭をうなだれ礼をなし
鼓の方を懐かしげに
見返り見返り行くとなく
消ゆるともなき春霞
人目朧に見へざれば
ソレ 呼び戻せ 鼓 鼓・・・
静はまたも鼓取り上げて 打てど不思議や音は出でず ちいともぽうとも音せねば
さては魂残すこの鼓 親子の別れを悲しんで 音を止めてしまったのか・・・
by dendoroubik
| 2023-05-27 05:00
| ◇小松お旅まつり
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