人気ブログランキング |

天寧寺 五百羅漢

c0196076_17411259.jpg


文政のはじめ・・・井伊家中興の名君と謳われた13代藩主・井伊直中のもと彦根藩で騒ぎがおこります。 
槻御殿の腰元「若竹」が懐妊していることが発覚したのです。 男子禁制のこの場所、いったい相手は誰か。 
激しい拷問が加えられ 問いただされても彼女は一切 お腹の子の父の名を明かそうとしません。 
さては不義の子・・・とうとう直中は彼女を成敗してしまいます。 




c0196076_18212562.jpg

ところが、彼女の死後、身ごもっていた子の父親が長子・直清だったことがわかり、直中は苦悩します。 
直清は長子とはいえ側室の子どもだったので正室の子・直亮が生まれると廃嫡されてしまいますが
直中自身、常々彼には目をかけ、特別な愛情を注いでいたのでした。

c0196076_18213420.jpg

自分の初孫とその母を殺してしまった後悔の念から
直中はふたりの菩提をともらうために、彦根城が見える里根山のこの地に天寧寺を建立。 

c0196076_18331949.jpg

聖徳太子お手植えの霊木といわる「ハナの木」で観世音菩薩をつくらせ
さらに京の仏師駒井朝運に500体の羅漢像を彫らせ羅漢堂に安置したというのです。

c0196076_18214722.jpg

羅漢は、お釈迦様の下で修行したお坊さん(最高位をあらわす「阿羅漢」の略)ですので
菩薩や如来とちがい、いかにも近所にいそうな親しみやすさをおぼえます。 

c0196076_18213088.jpg

一日の作業のすべてが修行・・・という教えから表情だけてなく、動作や持ち物もさまざま。

c0196076_18350570.jpg


c0196076_18350899.jpg

駒井朝運とその弟子が約10年かかってつくったといわれます。   

c0196076_18315071.jpg


亡き親 子供に会いたくば 五百羅漢の堂にこもれ


c0196076_18314584.jpg

五百羅漢をつくることを命じた直中は、若竹や、会うことのできなかった孫の顔をそのなかに見出せたでしょうか・・・?

c0196076_18362706.jpg


c0196076_18353576.jpg

「何してるねん」
「羅漢さんを見てるねん・・・ふふ、似てるわ」
「誰に?」
「お前の知った顔の、男の似てるの探してみ。 いろいろ似てるのいるで」

c0196076_18221698.jpg

世界映画史上屈指の名作、溝口健二の『西鶴一代女』の主人公、お春(田中絹代)のセリフです。

c0196076_18313357.jpg

映画では奈良のはずれの荒寺という設定ですが、冒頭とこのセリフがあるラスト近くは、この天寧寺でロケされています。

c0196076_18363397.jpg


c0196076_18345543.jpg

御所に出仕していたお春は、その美貌ゆえに男たちの欲望に翻弄され
松平家の側室、島原の太夫、商家の女中、ついには夜鷹にまで身を持ち崩してしまいます。

c0196076_18311810.jpg

その夜も客をとれなかった老いた夜鷹のお春は、読経に誘われるように羅漢堂へ。
壁いちめんの羅漢のなかのひとりに目をとめたお春は、少女のようにはにかんだ笑みを浮かべます。

c0196076_18314071.jpg

その羅漢の顔がひとりの青年の顔にオーバーラップしてゆきます。
それは、およそ40年まえ御所に出仕していたころ彼女に懸想していた公卿の若党、勝之介(三船敏郎)の顔。

c0196076_18370643.jpg


c0196076_18351518.jpg

お春も、情に絆されて、勝之介に心を許しますが 身分違いの恋。
寺町の中宿で逢引きしているところを役人に踏み込まれご用。 お春は両親ともども洛外追放、勝之介は斬首されてしまいます。  
 
c0196076_18315542.jpg

お春さま、よいお人を見つけて幸せな所帯をお持ちくだされ。   
身分などというものがなくなって誰でも恋ができる世の中がきますように・・・

c0196076_18220630.jpg

宇治に移り住んだお春は、真葛原の出振舞に踊った美しさを見込まれ、江戸松平家のお部屋様に取り立てられます。
殿のひとかたならぬ寵愛を受け嗣子までもうけますが、側近の妬みに逢って実家へ帰されてしまいます。

c0196076_18362048.jpg


c0196076_18345064.jpg

親に島原の廓に身を売られ、田舎大尽に身受けされようとしますが、その男は偽金作りの罪人。

c0196076_18333556.jpg

笹谷喜兵衛の家へ住込女中となりますが「これでタダで島原太夫と遊べる」
と平気で言うような下司野郎。 嫉妬した女房お和佐に追い出されてしまいます。

c0196076_18333172.jpg

誠実を絵に描いたような扇屋の弥吉の妻となったお春。
貧しいながらも、ようやく幸せな生活を手にしたと思ったのも束の間。 夫は賊に襲われ頓死。
世話になった笹屋の番頭文吉は、お春のために店の品を盗んだことが発覚し
文吉につれられ駆け落ちして桑名で捕えられ・・・宿屋の飯盛女、湯女、水茶屋の女、歌丘尼
そして老いさらばえて、とうとう辻に立つ夜鷹に・・・

c0196076_18335787.jpg


c0196076_18363620.jpg

映画とはいえ、あまりにも悲惨なお春の境涯に誰もが苛立つラスト近く、老母がうれしい知らせを持って訪ねてきます。
松平の側室だった頃に生んだ子が大名となり、ついてはお春を生母としてお屋敷に呼び寄せたいというのです。

c0196076_18332572.jpg

わが子に会えると喜んで駆けつけたお春でしたが「大名の生母が夜鷹にまで身を落とすとは何事か!」
叱責を浴びせられ、永年蟄居を命ぜられらだけのことでした。 
立派な大名になったわが息子の姿を遠目に眺めながら声さえかけられず、お春は行方をくらましてしまいます。 

c0196076_18215322.jpg

救いも恩寵もありません。ただ、物乞いをしながら尼となって巡礼するお春の姿を捉えたラストシーン
可憐な少女から「化け猫」と蔑まれる老婆までを演じ切ってしまった田中絹代の気迫に胸を衝かれるばかりです。

c0196076_18310782.jpg

羅漢堂の中央にお釈迦様とその脇に十大弟子がおられます。 
(先日DVDでこの映画を見ていたら、上段のこのあたりにカメラを据えたショットがあり驚きました)
その左右(北)と東西のひな壇に羅漢像が500体やや大きめの羅漢像が16体、計527体が安置されています。

c0196076_18381715.jpg

羅漢石庭。  左奥に彦根城が見えます。

c0196076_18372207.jpg

諸田玲子の小説『姦婦にあらず』では、この天寧寺が直弼とたか女との密会の場になっていました。

c0196076_18382257.jpg

井伊直弼の供養塔。 桜田門外の変の直後に井伊直弼の血に染まった土、遺品などがが納められているそうです。 

トラックバックURL : https://gejideji.exblog.jp/tb/30556699
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by cfc999 at 2019-11-06 01:12
dendoroubikさん、こんばんは。
  
  今日は珍しく絶世の美女は最後までお出ましにならなかったですね。(笑
  ここの五百羅漢はお堂に入っているので
  野ざらしの五百羅漢(石仏)から見れば驚く程凄く綺麗ですね。 アタリ前か(>_<)

  先日の〇スの件はお笑い系の女子の事です。
  私はいたって普通で超面食いではありませんので・・・^^;
  
  いつもイイネをありがとうございます。^^
Commented by ruolin0401 at 2019-11-06 03:01
1,3,6作品のようにオールキャストが揃うと
絶景です。
羅漢さんに絶景なんて言ったら叱られますかね。
Commented by dendoroubik at 2019-11-06 07:53
☆cfc999さん

田中絹代のスチールを借用して挿入しようかとも考えましたが
彼女も いわゆる「美人女優」じゃありませんからね(笑)
でも この映画の彼女の表情はとても美しいと思います

こちらの五百羅漢は 制作年代が比較的新しいので
国の文化財指定は受けていません
祭りもそうですが 指定を受けているか受けていないかは
そのすばらしさ(というかすばらしいと感じることは)別モノですね
空いていますので じっくり対話できていいです(^-^
Commented by dendoroubik at 2019-11-06 07:59
☆素浪人さん

絶景でした!
北東西の3面にズラリと並んでいて その前にいると全体が感じられました
写真だと 一面ずつしか切り取ることができませんので
じっさいに感じた以上の感興を伝えることができないのが残念です
どんなものでもそうなんでしょうけれど 写真は印象の影ですね
影の方が美しいことは ままありますけれど(^-^
by dendoroubik | 2019-11-05 22:56 | 滋賀 彦根 | Trackback | Comments(4)