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米原曳山まつり 2019 壽山組『鬼一法眼三略巻 今出川菊畑の場』後篇

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台風の影響で2日目から3日目に変更になった本祭も朝から雨で
湯谷神社での神前奉納も、ヤマの前と左右にブルーシートをかけたりと
準備がたいへんそうで、各山とも2時間ちかく遅れての開演となりました。
その後の上演スケジュールも大幅に変更になり、計画通りに狂言を見ることはできませんでした。
とくに壽山組はこの一回しか見ることができず
すばらしい出来だっただけに、できればブルーシートのないヤマで見たかったものですが
そんな状況下でも、最後まで祭りを執り行っていただいた町衆に敬意と感謝を贈りたい。



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泣いているとこにあらず。 明日になれば『六韜三略』の虎の巻は清盛へ献上されてしまいます。
力づくでも手にいれると勇み立つ牛若丸に鬼三太は、鬼一法眼はわが兄者人
刃傷沙汰に及ぶのは兄弟の道に反する・・・と、虎の巻を盗み出す相談をしているところへ・・・

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皆鶴姫が奥の間から現れます。

智恵内が鬼一とのとりなしを頼むと、姫はそのかわりに虎蔵との仲をとりもって欲しい、と。
智恵内が困惑していると、姫はみずから、こんな風に恋の告白をします。

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「こりゃ、なんじゃえ?」 菊の花を一本手折り、皆鶴姫が問います。
「これは何だと御意あそばす」
「それは菊の花にござりまする」

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色変わる 秋の菊をばひととせに

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「この歌の下の句は?」
「ふたたび匂ふ 花とこそ見れ」

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その歌のこころは・・・

時の移り変わりとともの色彩の変わる秋の菊は 一年に二度咲く女花のようなもの
命に代えて詫び言するこの皆鶴姫を 夫としてふたたび咲き匂う女花と思い愛でてくださいますか・・・
(たぶんこれくらいの意味だと思うのですが、ちがってたらスミマセン(笑))

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「あなた様はご主人、わたくしめは家来。 数ならぬ身をそれほどまでに・・・」
「数ならぬ身とはお偽り」
皆鶴姫は、虎蔵が牛若丸、智恵内が吉岡鬼三太ということをすでに知っているのでした。

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秘密を守るために、智恵内は姫を斬ろうとします。

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姫も もとより覚悟の上、来世で牛若と添えるようにと祈ります。

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と、そこへ現れたのが湛海。

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ふたりの正体を清盛に注進せんと駆け出すのを・・・

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牛若は一刀のもとに切り捨てます。

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牛若は皆鶴姫の命を助けるように智恵内に命じ・・・

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鬼一法眼に直談判して「虎の巻」を譲ってもらおうと、奥庭へと向かってゆくのでした。

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はじめて見る外題で、子ども役者たちの熱演も光り(とくに鬼一法眼がお気に入りです)見応えがありました。

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このあと「奥庭」では、牛若が正体を明かして鬼一と対決しようとします。

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ところがそこに現れたのは、天狗の面をかぶった僧正坊。 鞍馬山の恩師です。

実は、鬼一こそ鞍馬山で天狗の僧正坊と名乗り、幼い牛若丸に軍法の奥義を教えたその人だったのです。
鬼一法眼は皆鶴姫に虎の巻を託し、いずれ夫となる人(義経)の手に渡るだろうことを仄めかして自害。
表向きは、平家の禄を食みながら、ふたりの弟同様、源氏に心を寄せていた鬼一法眼の心底が明かされます。

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『菊庭』の全編は、このどんでん返しを導く伏線のようなものですから
「奥庭」を省いてしまうと、いったい何の芝居なのかピンときません。 
鬼一法眼が善玉なのか悪玉なのかさえはっきりしませんね。
まるで、討ち入りをするかしないかわからない内蔵助のようなものです(笑)
それでも、現在も「四段目」とともにこの「三段目」が上演されるのは
それだけで美しい情景と衣装、舞踏劇のような楽しさがあるからなのでしょう。

壽山の『菊庭』も、そういったところがとてもよく出ていて、楽しませていただきました。

by dendoroubik | 2019-10-23 05:00 | ◇米原曳山まつり | Trackback | Comments(0)