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米原曳山まつり 2019 壽山組『鬼一法眼三略巻 今出川菊畑の場』前篇

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『鬼一法眼三略巻』は子ども歌舞伎で見ない年はないんじゃないか、というくらいの人気演目です。
今年の長浜曳山まつり、常盤山も演っていましたし、3年まえの米原の同じ壽山でもかかっていました。
ただ、それは四段目の『一條大蔵卿』の話で、三段目の『菊畑』は大歌舞伎ではメジャーな演目でも
地歌舞伎では、後段ほど上演されることはないのではないかと思います。

だいたいこの物語は『義経記』に登場する「鬼一」という陰陽師にして兵法家が
実は鞍馬山で牛若丸に剣術指南をした天狗だった、というアイデアから着想されていますので
その謎を導き出す『菊畑』がメインのはずですが、その謎が明かされる後段の「奥庭」が割愛されると
キレイなだけで、もうひとつ何の話かよくわからないところが、上演回数の少ない理由なのかもしれません。
かたや『一條大蔵卿』はドラマチックで役者の見せ場も多いことが人気の秘密なのでしょう。

ちなみに虎蔵(牛若丸)と 知恵内(鬼三太)役の男の子は前回の四段目では
鳴瀬と八剣勘解由・・・ともに平家側の役を演じていました。 出世しました(笑)




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平家にあらずんば人にあらずといわれた時代。
舞台は京の都、菊の香漂う、兵法学者吉岡鬼一法眼の今出川の館の庭。
最近この館に雇われた奴の智恵内が、言いつけられた庭の掃除を終えたところです。

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実はこの智恵内は、吉岡三兄弟の三男、鬼三太。 つまり館の主、鬼一の末の弟です。 
次男は四段目に登場する鬼次郎。
兄弟はもともと源氏の侍でしたが、長男鬼一だけは寝返って清盛に仕えています。
次男と三男は源氏の再興を目指して暗躍。 
智恵内(鬼三太)は鬼一が所蔵する兵法の虎の巻『六韜三略』を盗み出すために
虎蔵(実は牛若丸)とともにこの館に潜りこんでいるのでした。

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「かほどやさしき花の名を、誰が石割と名付けけん」

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鬼一は、菊畑は掃き清めてあるのに、松や楓の落葉はそのままにしてあるのに気づいて智恵内を叱ります。

ひとつふたつあれば、塵でしかないが、秋の紅葉がいちめんに敷き詰められれば風情はまたひとしお。
そう思ってわざと落葉を残しておいた、という智恵内の答えに鬼一は・・・
「かほど分別ある者を、誰が智恵内とは名付けしぞ」と感心し、こんな身の上話をはじめます。

自分にはふたりの弟がいて、智恵内の出身地、熊野に住んでいるはずだが、いまは行方知れず。
為朝・義朝親子が相争うのを見て源氏を見限り、幼い弟たちを熊野の山奥へ隠し
自分は平家に仕えながら、やがて源氏の大将にふさわしい人物が現れたなら、父の遺言通り
吉岡家に伝わる軍法の「三略の巻」を渡さねばならない・・・そのためにいまは仮病を使い
この巻を無心する清盛をのらりくらりとかわしているのだ、と打ち明けます。

われこそは鬼三太・・・と名乗りたいのをぐっと堪え、もし弟たちが名乗って出たらどうするかと尋ねると
いまのの主君はあくまで清盛、もし弟たちが源氏に味方するのなら、清盛に差し出すだろうと云います。

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そこへ鬼一の娘、皆鶴姫につきそって外出していた虎蔵(牛若丸)がひとりで帰ってきます。

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虎蔵は、清盛の命令で家伝の『六韜三略』を明日、献上しなくてはならなくなったこと
鬼次郎、鬼三太を詮索するため。笠原湛海がやってくることを伝えます。

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これを聞いた鬼一は俄かに不機嫌になり
皆鶴姫をおいて帰ってきたのかと虎蔵を責め、智恵内に杖で打てと命じます。
鬼一は虎蔵が牛若丸だということをすでに見破っており
先ほどの機転の利いた庭のやり取りから、智恵内が弟、鬼三太だろうと確信したのでした。

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しかし、智恵内には『勧進帳』の弁慶のように主君を打つことはできません。

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そこへ皆鶴姫が帰ってきます。 先に帰るように虎蔵に命じたには自分だから
虎蔵を責めないでほしいと父に許しを乞います。 皆鶴姫は虎蔵に恋心を抱いています。

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皆鶴姫に横恋慕している笠原湛海が登場。

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ご病気だと承っておりましたが、思いのほかお元気そうでなにより。

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湛海は鬼一に、皆鶴姫を自分に嫁がせ吉岡の家を継がせよと吹っかけます。
ふたりは密談のため奥の間へ。 そのとき智恵内と虎蔵は暇を出されてしまいます。

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虎蔵は、智恵内が自分を杖で打たなかったことを叱ります。

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「是非もなき世の盛衰じゃなあ」

『六韜三略』を盗み出す目論見が不首尾におわり、運がないことを嘆きあう虎蔵と智恵内・・・

Commented by ei5184 at 2019-10-22 09:53
maturiさんの処でもコメントしたのですが、
13日は午後から2回だけの披露でした。
他の二つの曳山と開演時間がほぼ重なって、慌てて夕方南の組の会場を訪ねて行きましたが、
何しろ一番端でしかも場所が判らずに、ウロウロ!
やっとのことで辿り着いたら、お終い(笑)
珍しい演目でしたので、観る事が出来ずに残念でした。
Commented by dendoroubik at 2019-10-22 10:07
☆eiさん

あとのふたつは複数回見られたのですが
こちらの外題は 神前奉納のいちどだけでした
しかも雨のなか傘をさしながら(^-^;)
前と左右には雨除けのブルーシートで覆われ
これを外して撮るのは至難の業・・・というか不可能でした
熱演が伝わってくる舞台でしたので 通常の状態で見たかったです
けっきょく 晴れていたのはeiさんの行かれた2日目だけでしたね
日頃の行いの差でしょうか(笑)
Commented by u-Brigand at 2019-10-23 20:08
こんばんは!
流石のお書きなんですね、キャプションの中身が
いつも充実しております。
よくよく知っていなきゃ書けない内容が随所に
出てきます。いつも感心して読んでいます。

「風の盆」を真剣に書き綴ったらどれだけ書ける
かなとふと思いました。
Commented by dendoroubik at 2019-10-23 20:57
☆いちやどさん

大学は いちやどさんの後輩 文学部でしたから
・・・と言いたいところですが ろくに学校へ行かず
大半は映画館に潜り込むか バイトをしてましたので
驚くほど 何の素養もありません(^-^;

写真で多くのことを語れる人は あえて文章なんていらないのだと思います
山岳家に名文家というか詩人 哲学者は多いですが
それにくらべれば 写真家で文章の巧い人はあまりいないように思います
by dendoroubik | 2019-10-22 02:40 | ◇米原曳山まつり | Trackback | Comments(4)