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米原曳山まつり 2019 松翁山組『蝶千鳥曽我物語 中村閑居の場』前篇

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江戸に3つあった官許の芝居小屋では、正月に必ず「曽我もの」の新作を上演する習慣があったのだそうです。
正月になると「寅さん」の映画をやったり、師走になると必ず忠臣蔵のドラマを放映したりといった
ひと頃のローテーションのようなものかもしれませんが、100年以上にわったって、手を変え品を変え
「曽我もの」の新バージョンが発表されていたことになり、なぜそれほどまで飽きもせず繰り返されていたのか
現代の感覚からすると、ちょっと理解しがたいところもあります。




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それらの脚本はほとんど散逸して現存せず
明治以降は地方の芝居で「曽我もの」は命脈を保ったようですが
現在は、同じ仇討ちものの忠臣蔵を、毎年のように子ども歌舞伎で見るのにくらべると
上演回数は、お話しにならないほど少ないのではないかと思います。

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僕が見た「曽我もの」は、4年まえの小松お旅まつりで上演していた『曽我十二時 揚巻助六の巻』
という愛知県に伝わる地芝居と、同じく昨年小松で上演された、この『蝶千鳥曽我物語』のみです。

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建久4年5月。 この日は亡き夫河津三郎の月命日。 三郎の妻、満江は女中のおさきを呼びます。

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団四郎バージョンだと、ここでおさきちゃんがギャグを言うところですが(笑)
菩提寺への手紙を言いつけられてシナをつくり退場となります。

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十郎が、弟の五郎をともなって帰ってきます。
明日、頼朝が富士の裾野でおこなう狩場の催しの総奉行は父の敵、工藤祐経。
巻狩に乗じて、いよいよ仇討ちの本懐を遂げるとき、と勇み立っています。

しかし・・・かつて五郎は行実阿閣梨のもとへ修行に出されていた折り
勝手に寺を抜け出して北条時政を頼って元服。 これに腹を立てた母満江に勘当された身。
勘当を解かなければ仇討ちをすることができません。
五郎は兄十郎に、母に勘当を解いてもらうよう、執り成しを頼みます。

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明日の富士の裾野での狩場の催しに着る晴れ着を所望する十郎に、満江は形見の小袖を与える約束をします。

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聞かずとも仔細ありげな様子を察した満江は、もうひとつお願を、と言いかける十郎に・・・

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五郎の勘当のことなら、決して許しません、と満江はピシャリと機先を制してしまいます。

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年若き旅の僧が夜道を歩いています。 鳥目で夜はまったく目が見えないうえに持病の癪。
軒下でも借りて一夜を過ごそうと中村閑居におとないを入れます。

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応接に出た十郎は、人品卑しからぬ旅の僧の話を聞くうちに
それが生まれてすぐに越後へ養子に出された末の弟、禅師坊実江(ぜんじぼうじつえ)だと気づきます。

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親兄弟を訪ねて越後からはるばるやってきた弟に十郎は、自分は留守番にすぎず
母は父の回向に旅立って早や3年、十郎五郎の兄弟は、所詮仇討ち叶うまいと刺し違えて果てた
・・・とウソを言わざるをえません。

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十郎は越後に帰るよう諭し、禅師坊実江も聞き分けますが
ふたたび癪がひどくなって歩けなくなり、しばらく玄関のそばの小部屋で休ませることに。

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はるばる訪ねてきた実江に、なぜ兄じゃと名乗ってやりませぬ。

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いま名乗れば大事な場所への足手まとい。 せめてこの世に残し置き
身寄り少ない母上の力草にもなろうかと、千々に心を砕く切なさ、推量あれ。

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望みの通り狩場の小袖を与える満江に、十郎はふたたび五郎の勘当を許すよう頼みますが
なるほど五郎という子はあったれど、勘当したれば赤の他人。
実江も養子にやったれば、これとても親子でない。 
わが子といえば十郎ひとり・・・と、取りつく島もありません。

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隣で聞いていた五郎は・・・

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堪らず障子を両腕て突き破り・・・

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われにも小袖を!

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・・・と頼む心ぞ哀れなり。

Commented by minoru2703 at 2019-10-14 05:54
小松のお旅祭でも子供が歌舞伎を演じていますね
見たいと思いながらまだ見たことはありませんが(・・;)
Commented by dendoroubik at 2019-10-14 09:02
☆minoruさん

はい 毎年見せていただいています
珍しい女の子が主流の子ども歌舞伎は
他にはない華やか雰囲気が好いですね
お近くですので来年はぜひ(^o^)/
Commented by ei5184 at 2019-10-14 09:51
五郎が障子を破り手を出した処、
2回観たのですが、残念ながら諸事情(邪魔をされて 笑)で
撮る事が出来ませんでした(笑)
Commented by dendoroubik at 2019-10-14 10:57
☆eiさん

昨年の団四郎版では 開演まえに
ここが見どころと事前に紹介がありました(笑)
狭い曳山では巧くとらえられませんでしたが 
今回の稽古場では ようやくバッチリ見られました(^o^)
by dendoroubik | 2019-10-14 04:00 | ◇米原曳山まつり | Trackback | Comments(4)