2018年 01月 20日
宮津 今福の蛇綱
京都府の北端、酒呑童子伝説で名高い大江山の山麓、宮津市今福地区の「蛇綱」という伝統行事を見せていただきました。
言い伝えによると、この行事はいまからおよそ250年まえ、江戸時代の末期にはじめられたそうです。
その頃、このあたりで疫病が猛威を振るい、この集落からも多くの死者が出たといわれ
災厄を払うために藁で大蛇をつくり、村の入り口に掲げたのがはじまりとされています。
言い伝えを証かすように、智徳寺の過去帳にはその頃、大量の物故者の名が連ねられているということです。
同様の行事は今福だけでなく、波路・山中・惣の各地区でも行われています。
疫病の流行をきっかけに同時多発的に開始されたのでしょうか。
勧請縄として木に掛けられるまえに、蛇綱は数名に担がれて、集落の各戸を訪います。
獅子舞のように大蛇の口で家人の頭を咬み、これが「無病息災」の授福とされます。
かつてはこれを村の青年団がおこなっていたそうですが、戦時中に中断。
戦後も、若者の減少などで長らくおこなわれていませんでしたが、1980年、老人会(寿福会)により復活。
最近は宮津小学校の1年生も毎年参加するようです。
午前10時、法螺貝の合図とともに出発。そのまえにデモンステレーションで小学生の頭をひとりずつ咬んでゆきます。
滋賀県大津市尾花川で、これとよく似たものを見たことがあります。
藁で編んだ大蛇を子どもたち担いで各戸を訪い「蛇(じゃ)の顔見世でーす」と唱えながら
家人の頭を咬んでいく「尾花川の蛇(じゃ)の顔見世」という行事です。
そちらは、翌朝、大蛇を燃やしてしまう、おそらく左義長と結びついたものでした。
このあと全32戸を一軒ずつまわってゆきます。
もともと大人たちによって担われていた行事で、子どもたちの参加はイレギュラーですが
(「生活科」の授業の一環として、毎年1年生が参加されているそうです)
彼らが加わることによって、とても賑やかで楽し気な雰囲気が溢れてきます。
それは、あるいはこの行事の往時の姿を偲ばせるものかもしれません・・・
いや、それがどんなものであったのか、まったくわかりませんけれど(笑)
滋賀県近江八幡市に「まじゃらこ」という勧請縄を張る行事があり
これも、もともとは大人だけでおこなわれていたもののようですが
いつの頃からか、子どもたちが参加する、楽しい行事へと変貌していったのだそうです。今福は70数名がお住まいで、うち2割が90歳以上という高齢の集落。
この行事が何十年後、子どもたちによって担われることはないのかもしれませんが
少なくとも「まじゃらこ」と同じように、子どもたちに楽しさを与えていることはまちがいないでしょう。
小正月に藁で綱を打つ行事は、全国各地でおこなわれていたもので
多くの場合、その長さや形から綱はヘビに見立てられます。
上記の2つを含め、そんな行事をいくつか拝見させていただきましたが
僕の少ない見聞でもいくつかあったということは
逆に、さらに多くの行事が失われてしまったということなのかもしれません。
そんななかで、現在も行事が伝承されているのは
地元の方々の保存活動の努力によるところが大きいことはまちがいありませんが
見ていて、いずれも、ほっこりとした楽しさが伝わっくる、という共通点があります。
そんな楽しさが、保存活動のいちばんの原動力なのではないかな、と思います。
すべてのお宅をまわり終えると、最後に荒木神社へ参拝し・・・
鳥居の脇のイチョウの木に「蛇綱」を巻き付けてゆきます。
勧請縄といっても、張り渡すものではなく
神社の入り口の木の上でニラミを利かせ「道切り」として集落を守るもののようです。
かつては、村の入り口にあった木に架けられていたそうですが、その木が枯れてしまったため、神社に場所を移したのだそうです。
でも、すごく「護られてる感」ありますね(^-^
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rinkatuu at 2018-01-20 21:19
ここに参加されてる方々が
10、20年後にこの写真を見ると
すごく笑顔あふれるでしょうね^^
10、20年後にこの写真を見ると
すごく笑顔あふれるでしょうね^^
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dendoroubik at 2018-01-20 21:41
☆rinkatuさん
他所の祭りに係れるというのは貴重な体験で
なにより子どもたちは楽しそうでした(^-^
当時は何やってんのかわからなくても
祭りで涵養される感受性というのはすごく大きいと思います
他所の祭りに係れるというのは貴重な体験で
なにより子どもたちは楽しそうでした(^-^
当時は何やってんのかわからなくても
祭りで涵養される感受性というのはすごく大きいと思います
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ei5184 at 2018-01-21 06:35
こう云う蛇だと、安心できます(笑)
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dendoroubik at 2018-01-21 11:45
by dendoroubik
| 2018-01-20 21:09
| ◆丹後の祭
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Comments(4)