ヤシャリさん

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1月5日の午後、子供たちが交代で
「ヤシャリさん」を背負い、集落内の家々をまわっていきます。
背負う役目は小学6年生。下級生はお盆を持って、御供米を集めます。
家人は、一合ほどの米をお供えし、子供の背負った「ヤシャリさん」を撫でさすって
持病の平癒やその年の息災を祈り、恭しく手を合わせて送り出します。

滋賀県竜王町林地区に伝わる、「ヤシャリさん」という行事です。




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ヤシャリさんです。

いったい何という仏さんなのかも不明で、ヤシャリさんという名の由来も詳らかにされていません。
近くを流れる日野川が氾濫をおこしたたとき、林の集落に漂着した・・・という言い伝えがあるそうです。

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午前1時、地区の小学生が常信寺に集合。
その朝、大日堂から遷されたヤシャリさんを背負った、6年生を先頭に、出発します。

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一軒ずつ訪いを入れ、御供米を頂戴します。
留守宅もあり、なかには軒先に御供米だけ、置手紙をとともに置かれたお宅もあります。

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紅白のおんぶ紐で負ぶわれたヤシャリさん、赤ん坊とはちがい、後ろ向きに負ぶわれています。

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頂いたお米は、リヤカーの上の米袋のなかへ・・・。

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途中、勧請縄の張られた社を見かけました。

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おんぶ係が交代して、また一軒一軒・・・。

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ヤシャリさんの訪れに、どちらもホントに嬉しそうです・・・。

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ふざけてお盆を割ってしまい、家へ新しいお盆を取りに帰る少年。 背中に哀愁が漂っています(笑)

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元旦から降り、溶け残った雪で雪合戦。

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3時間半にわたって行事がつづくのですが、御供米を貰う係は一軒につき一人ですので
下級生は待ち時間が多くて退屈を駆逐するため、さまざまな遊びを「発明」してゆきます・・・。

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女の子は南天の実で、雪だるまや雪うさぎ・・・。

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お盆で南天レース(笑)

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昨年の1月に、同じ竜王町の田中で「粥占い」という行事を見せていただきました。
占いに使われる米は、その朝、子供たちが家々をまわり、

 一四日の粥の米
 どうの とーとの
 古年(ふるとし)の米

と唱えながら、集めて来るのだそうです。

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粥占い自体は、田中にしか残っていませんが
かつて竜王では年頭の行事としていくつかの集落でおこなわれていたそうなので、
あるいは「ヤシャリさん」もその名残りなのかもしれません。

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  やしゃりさんの願じ
 穂に穂が咲いて
 道の小草に米がなる


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昔は、林でもそんな唄をうたいながら、家々をまわっていたそうです・・・

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ヤシャリさんを背負う役は、3,40分ごとに交代です。

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それにしても「ヤシャリさん」という名が気になります。

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漢字で「那舎利」と書くそうですが、どこか異郷の匂いのする言葉です。

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語感だけが生々しく意味から浮遊して、妙なリアリティを持ってしまうということがありますね。
「ヤシャリさん」・・・という、言葉の響きも、語源が定かでない分、よけいに想像力を刺激されます。

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『徒然草』第六十段にに出てくる、意味はわからないのに「しろうるり」っぽい
という話のように、「やしゃりさん」もやっぱり「やしゃりさん」っぽい(笑)

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「漂着神」・・・想像が当て所なくひろがります。

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あたりが夕暮れてくる頃、最後の家をまわって、いよいよ終了です。

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23人の子供たち、ひとりひとりに個性があり
呼び合う名前から、3時間半のあいだに、全員の名前を憶えてしまうほどでした(笑)

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午後4時半に常信寺に帰着。 30分後、ふたたびお寺に集合です。

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それぞれお茶碗と、湯呑み、6年生はそれにお漬物を持ってくるように言い渡されます。

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・・・と、ここで帰るつもりだったのですが
ご住職から、いっしょに炊き込みご飯を、とご厚意をいただき、厚かましくもご相伴に与ることに。

本堂で、いろいろな話をお伺いしました。

およそ娯楽の乏しい時代にあって、子供たちを楽しませようと
この行事がはじまったのではないだろうか、ということ。
昨年、安土考古博物館に委託され、1年間、そこで「ヤシャリさん」は展示され
おそらく鎌倉時代の作だろう、と判定されたこと。
洪水で漂着したからには、おそらく上流域に「ヤシャリさん」の所有者がおり
名乗りでてくれないかと期待されている、ということ。
昔は「ヤシャリさん」の御供米を、役員の女性と、6年生の女の子たちが
おくどさんで炊き込みご飯にしていたこと・・・などなど。

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午後5時、ふたたび子供たちがお寺へやって来ます。

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ご住職から「ヤシャリさん」の由来について、わかりやすい説教があります。
おそらく、1年生から6年間、子供たちは同じ話を聞かされるのでしょう。
それは大人になっても、忘れることのできない、大切な思い出になるのだと思います。

南無阿弥陀仏。

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全員のお茶碗に炊き込みご飯がよそわれ・・・いただきまーす。

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この日はお天気で、気温も比較的穏やかでしたが、それでも冬の日に、4時間近く戸外を歩いたあと
あたたかい炊き込みご飯はとてもおいしかったです。 6、7杯もおかわりする子供も(笑)

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食後、「竜王かるた」なるカルタ大会があり、これも興味津々だったのですが
昼すぎから、竜王アウトレットパークに6時間も妻を置き去りにしていたので(笑)
さすがにこれ以上、待たせるわけにもいかず、ここで失礼させていただきました・・・。

ご住職をはじめ、親切な方々ばかりで、笑顔にあふれた、とてもすばらしい行事でした。

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Commented by shinrajuku at 2015-01-07 13:35
こんにちは。
失われつつある日本のよき伝統が残されているのですね。
それにしてもお年寄りの方々や子供たちのの生き生きとした表情。
この集落では孤独死なんて言葉は存在しないのでしょう。
dendoroubikさんの手によって、
傾きかけた冬の陽に良き日本が浮かび上がってきます。
日本は素晴らしい!!
唯一気がかりなのはアウトレットパークで奥さまと再会された際に、
dendoroubikさんの身がご無事だったのかどうかだけです・・・(笑)
Commented by dendoroubik at 2015-01-07 19:13
☆shinrajukuさん

こんばんは!
滋賀県に住んでいると「失われつつある」・・・というのがよく理解できなくなります
「失われつつ」どころか 一生かかっても見ることができないほどの民俗行事が(笑)

老若男女の笑顔が同じフレームのなかに収まってる
・・・というのが いい祭りや行事
・・・といいますか 好きな催しです
正直 最初は「ちょっと退屈かな?」と思わないでもなかったのですが
とてつもなく楽しい行事でした
心がほんわか温かくなりました

寛容なのか たんに諦められているだけなのか
妻はこういうことには何もいいませんのでご心配なく(笑)
ただ ある祭りに連れていったとき
完全に放置したままなのを根にもってか
決していっしょに行こうとうとはしません(笑)
by dendoroubik | 2015-01-06 07:00 | ◇ヤシャリさん | Trackback | Comments(2)