2014年 12月 21日
米原曳山まつり 2014 松翁山
振り付けは、もちろん市川団四郎師匠です。
昨年の長浜曳山まつりでも、師匠の演出で『壷坂霊験記』が上演されていました。
今年、師匠の演出する子供歌舞伎を見るのは「出町子供歌舞伎曳山まつり」「小松お旅まつり」につづいて3本目です。
松翁山に出演する5名の役者のうち、3名は6年生で、今年で子供歌舞伎は卒業。
主役の男の子は、1年生のときに演じた三番叟から、ずっと見てきたことになります。
最後の舞台をどうしても見たくて、竜王の祭りを途中で切り上げ
宵宮の夜の公演を見に、米原まで駆けつけました・・・
幼い頃に両親を亡くしたお里は、叔父に引き取られ、いとこの沢市といっしょに育てられます。
お里は沢市を「三つ違いの兄さん」と慕い、疱瘡が原因で目が見えなくなった定市と夫婦に。
しかし、暮らし向きは苦しく、この日も3人の借金取りが押しかけてきます。
借金を返してもらえそうもないと悟った3人が仕方なく家財道具を物色じはじめると、屏風のかげから雁九郎がのっそり姿を現します。
しばらく待ってくれ・・・とその場を取り繕うお里・・・
沢市は雁九郎と一人二役です。
琴や三味線を教えて暮らしを立てる沢市。近所の人に稽古をつけてきて、帰宅。とても不機嫌です。
目の見えない沢市が耳にするのは、お里の器量がよい・・・という話ばかり。
そういえば、夫婦になって3年、お里は決まって明方に部屋を抜け出してゆきます。
他に男ができたのでは・・・と問い詰める沢市に、壷坂の観音様に、目が見えるようにと願をかけ
3年越しでお参りしているのだと打ち明けます。そして、今日がその満願の日・・・。
そんなお里を疑ったことを恥じた沢市は
妻は夫をいたわりつ~、夫は妻に慕いつつ~
有名なこの文句は浪曲のものなので、芝居には出てきません(笑)
お里を帰らせ、壷坂寺でひとりになった沢市は、自分がいなければお里は幸せな人生を送れるだろう
胸騒ぎがして戻ってきたお里。沢市が身を投げたことを知って嘆き悲しみ、自分も後を追って身を投げようとします。
と、そこへ鴈九郎。オレといっしょになれと迫りますが、すげなく拒絶され、逆上してお里に襲いかかります。
鈴の綱が首に巻きつき・・・鴈九郎も息を引き取ります。
鴈九郎の不思議な死に方を知った金貸し二人。
「観音さまの罰が下るのはあたりまえ」
「あたりまえ、ったらあたりまえ」
「あたりまえ体操」(笑)
このギャク、昨年の長浜でも使われていました(笑)
谷底で倒れる二人のもとへ、壷坂寺の本尊、十一面観音が現れます。
いかに沢市 承れ 汝 前生の業により盲目となったり
しかも両人ながら 今日に迫る命なれども
妻の貞心 または念ずる功徳にて 寿命を延ばし 与うべし
この上はいよいよ信心渇仰して
三十三カ所を巡礼なし 仏恩報謝なし奉れ
こりゃお里 お里 沢市 沢市・・・
気を取り戻した沢市とお里。
ええ あの・・・ほんにこりゃ眼が明いている
おお 眼が開いた 眼が開いた
観音様のお陰・・・有り難うござります
むむ・・そしてあの・・・お前はまあ どなたじゃえ?
どなたとは何ぞいの これ 私はお前の女房じゃわいな
ええ、あのお前がわしの女房かえ
これはしたり・・・初めてお目にかかります
お礼申すや 神や仏 よろず見せ給ふは これひとえに観世音の 誓いの重きは 岩を建て
しかし、子供歌舞伎の役者は、いくらお気に入りでも、ほとんどがその年限り。
こんなに長らく楽しませていただいけたのですから、僥倖と思わなければなりませんね・・・。
ありがとう・・・
これまで悲劇的な役柄ばかりでしたが、最後の最後にハッピーエンドの物語。
団四郎師匠の粋なはからいでしょうか・・・