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丹生茶わん祭 その1

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5月4日、滋賀県長浜市余呉町上丹生(かみにう)で
「丹生(にう)茶わん祭」がおこなわれました。

長年、恋焦がれてきた祭りです。

なにしろ、開催が不定期・・・という祭りです。

前回おこなわれたのが5年前・・・迂闊にも見逃してしまい、
次回、見逃してしまうと、いつ見られるかわからないので、
情報を取り逃すまいと、絶えず気を配っていました(笑)

満を持しての参戦です!




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この祭りが「奇祭」と呼ばれる所以は
(この祭りがとてつもなく面白い理由は
・・・と言い換えてもいいかと思いますが)
大きくふたつあると思います。

ひとつは、他に類のない奇妙奇天烈、
かつ、精巧極まりない曳山の装飾。

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いまひとつは、ささらや棒振りなどの道中舞、
花奴の踊りや稚児舞などの華やかな中世風流です。

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中世風流が、近世になって
曳山行事に変化していく例は各地に見られますが、
茶わん祭では、これが並存しているところが特異です。

京都の祇園祭のようなスケールの大きな祭りでは、
こういったことは見られますし、
いったん途絶した行事を復活させるということもあります。

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ただ、ここは人口300人ほどの山間の集落。

時代とともに、行事が収斂したり、
簡素化していくのが普通だと思うのですが、
>茶わん祭は、そういった流れに反し、
その長い歴史の痕跡をそのまま留めています。

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中世と近世がそのまま並存しているところが、
この祭りを「奇祭」たらしめている所以・・・不思議さです。

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壮麗な祭りを表現するのに
「時代絵巻」という言葉がよく使われますが、
この祭りこそ、まさに文字通り
中世から近世の時代絵巻を見るようでした。

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そもそも、何ゆえに「茶わん」なのか、ということですが・・・

この祭りの興りにはふたつの説があります。

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ひとつは、丹生神社の近くで良質の陶土が採れ、
近在の末遠氏(すえとう)が
陶器を焼いて奉納していたのを始まりとする説。

「末遠」というのは5世紀に
朝鮮半島から伝わったとされる須恵器のことで、
おそらく作陶に長けた渡来系の氏族だったのでしょう。

このあたりには、渡来人の名残をりを留める
地名がたくさんあるそうです。

いまひとつは、陶器づくりの名匠が、
その技術を神から与えられたことに感謝し、
陶器を奉納したことが始まりとする説。

観光案内なんかには、
二番目の説が採られていることが多いですね。

この祭りはもともと、
丹生、片岡、余呉の丹生三郷の陶工たちが、
その技術を競い合うように、
毎年輪番で祭礼をおこなっていたものそうです。

陶器づくりが盛んな地域だったのですね。

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ここで思い出すのが、世界映画史上屈指の名作
溝口健二監督『雨月物語』の冒頭のシーンです。

舞台は賤ケ岳前夜の湖北。

森雅之演じる主人公、源十郎は、
百姓仕事の傍ら茶わんを焼き、
秀吉軍の駐屯する長浜で売りさばいて大儲けをする、
・・・というエピソードがあります。

あの舞台はどこだったかな
・・・とDVDを見返してみると・・・

  「もっと儲けて中之郷に蔵を建てるのじゃ!」

・・・というセリフがありました。

これは僕の勝手な想像ですが、
舞台の設定はやはり丹生で、
ただ映画で「丹生」(にう)というのは
セリフとしてのノリが悪いので、
近隣の「中之郷」としたのではないかと思います。

上田秋成の原作から二篇を合成し、
舞台を近江に置き換えたのは映画のオリジナルですが、
溝口健二はしばしば滋賀県でロケをおこなっており、
その歴史にも精通していたようです。
あるいはこの祭りから、主人公が
茶わんを焼く話が構想されたのかもしれません。

(この映画は、ほとんどのロケが滋賀県の湖北から
湖西、大津にかけておこなわれていますが、
陶器を焼く森雅之の家のロケは、
なぜか京都伏見でおこなわれています)

陶器づくり自体は、早くに衰退してしまい、
片岡、余呉の集落は祭りに参加しなくなります。

ここ上丹生だけで3年毎に
おこなわれるようになったわけですが、
近年は過疎化のために5年毎・・・
最近は区民の協議で開催を
決定するようになったということです。

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山車は3基あります。

「丹宝山(にほうざん 北村組)」「壽宝山」(じゅほうざん 中村組)
「永宝山(えいほうざん 橋本組)」。

本体は藤蔓の縄で組みあげた素朴なものですが、
華麗な曳幕と見送り幕で飾り付けられています。

曳幕は足利時代から、
見送りは江戸時代から伝わる綴錦。

どうして山間の集落にこんな雅なものが
・・・と思ってしまいますが、
源十郎のように陶器づくりで
財を成した人たちが大勢いたのでしょうか・・・。

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そして、なんといっても、山飾りがスゴい!

下人形(したにんぎょう)と宙人形(ちゅうにんぎょう)
というふたつの人形が主役で、
そのふたつの間をテーマに沿った道具や
花鳥風月のつくりものでつないでゆきます。

そのつくりものは、祭りの名の通り、
なんと茶わんなどの陶器でできています!

その高さ5~6メートル。
曳山を入れると10メートルほどの高さになります。

山飾りは、わざと均衡を欠くように
不安定に組みあげられており、
それが絶妙のバランスを保ちながら、
曳行される際に、ゆらゆらと揺れる様は圧巻
・・・まさに工匠たちの名人芸です。

山飾りを組みあげる手法は
ごく一部の工匠たちの秘伝とされ、
後継者のみに継承される門外不出のもの。

曳山の上で、子供歌舞伎を演じたり、
からくり人形が操られるものがありますが、
この山飾りにも毎回テーマ(芸題)があり、
歌舞伎や読本、昔話などから採られています。

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永宝山の今回の芸題牛若丸と弁慶「橋上如燕飛法師謝地伏」。

  京の五条の橋の上 大の男の弁慶は
  長い薙刀ふりあげて 牛若めがけて切りかかる

  牛若丸は飛び退いて 持った扇を投げつけて、
  来い来い来いと欄干の 上へあがって手を叩く

  前やうしろや右左 ここと思えば又あちら、
  燕のような早業に 鬼の弁慶あやまった♪

・・・まさにあの唱歌の景色ですね。

五条大橋の欄干は、
湯呑み茶わんをつなげてつくられていました。

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丹宝山の芸題は鍋島猫騒動「怨念化猫城下跳梁」。

お政のお尻にはちゃんとシッポがついてましたよ(笑)

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壽宝山の芸題は番町皿屋敷「一皿行方噫悲恋落花」。

お菊の下の「く」の字形に組みあげられた皿がスゴい!

この皿を登場させるために、
この芸題が選ばれたのでは・・・
と思ってしまうくらい、見事に決まっていますね!

数えてみると、お皿の数はちゃんと9枚(笑)

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下人形の青山播磨の振りかざした刀に陶器の壷が・・・。

いったい、どうやってくっついているのでしょうか・・・?
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Commented by せんべぇ at 2014-05-13 15:50 x
おっ!!!ついに始まりましたね~~!!!
人口300人の集落でこのような祭りが継承されてきていることはすばらしいことですね!!!
その2も楽しみにしております。
Commented by dendoroubik at 2014-05-13 16:24
☆せんべぇさん

摩訶不思議な祭りでした

北前船で栄えたとか 絹産業が隆盛を極めたとか
大きな祭りには必ず経済的なバックボーンがあったと思うのですが
この村にはそういうものが見当たらないのが不思議です
近世の早い時機に苛政で衰微し現在は過疎化した集落で 
こんな壮麗な祭りが行なわれるなんて
まさに奇跡を見るようでした

登場人物が多いので 
帰省者や近隣の子供たちの応援を仰いでいるようでした
Commented by すぺいん人 at 2014-05-23 23:34 x
人口300人の集落でこのスケール!
毎年で無いとはいえ、これだけのお祭りの存続は大変なことだと思います。それでも伝統に誇りを持って守って伝えていきたいと云う心がみんなに有るんでしょうね☆

それにしても、、、この山飾りはすごいですね。。。
高さを使って題材を生かしてるのも面白いですし、どうやってくっついてるのか不思議ですね♪

チャンスを待って、休みが合う時には絶対行きたいです!・・・先の長い話になりそうですが(汗)
Commented by dendoroubik at 2014-05-25 03:43
☆すぺいん人さん

この山飾り いまもって謎です(^-^;

もっと謎なのは 近世の早い時期に衰微した村で
こんな盛大な祭りが行われつづけてることです・・・
ひなびた印象より ちょっと雅な感じすらする祭りでした!

不思議な気分が未だに残っています(^-^;
Commented by 青りんご at 2014-06-18 20:19 x
細かい解説読ませていただきました。非常に印象深い祭りでした。

http://kyouno.com/turezure/20140504-chawanmatsuri.htm
Commented by dendoroubik at 2014-06-18 23:21
☆青りんごさん

ホントに不思議で 奇妙な印象の残る祭りでしたね
幻を見たのではなかったかと思うくらいです・・・。
by dendoroubik | 2014-05-13 11:10 | ◆近江の祭 湖北 | Trackback | Comments(6)