2013年 11月 02日
米原曳山まつり 2013 その6 松扇山組①
「ただ男に惚れただけ。それのどこが悪いのさ」
まるでそんな伝法な物言いをするかのような表情の『神霊矢口の渡し』のお舟ちゃん。
小学五年生の男の子が演じていることに、改めて驚嘆します。
江戸末期,藤岡和泉が長浜の翁山を模して製作したといわれている松翁山。
宵宮の朝、新幹線、JR在来線、近江鉄道をまたぐ長い跨線橋を渡り
その日最初の子供狂言がおこなわれる会場に向かいます。
開演を告げる「出笛」・・・
冬の夜、男女の旅人が相模と武蔵の国境、矢口の渡りにさしかかります。
男は新田義貞の遺児、義峯。 女はその恋人、傾城臺(うてな)。
二人は京から、足利方の追っ手を逃れて故郷新田郷へ落ちのびる途中です。
矢口の渡しは、一年前、兄、義興が足利方の策略にはまり、討ち死にした場所。
こっそり回向の念仏をとなえる義峯とうてな。
義峯とうてなは、渡し守の家におとないを入れ、舟を出して欲しいと頼みます。
応接したのは、この家の主、頓兵衛の娘、お舟。
実は、一年前、褒美の金欲しさに足利方の手先となり
矢口の渡しで新田義興を溺死させた張本人こそ、この家の主の、頓兵衛。
でも、この時点ではお互いにそんなことは知る由もありません。
あいにく夜には舟は出せませんとお舟が応えると、では、このあたりに宿はないか、と義峯。
田舎のことゆえ、宿とてありませんが、ままお煙草など、と気立ての優しいお舟は二人を招じ入れます。
気品のある義峯の姿を見たお舟は、たちまち一目惚れ。
見晴らしのよい2階の部屋へ、一夜の宿を提供します。
それにしても、なんと凛々しいお方。
女に生まれたからには、あんなお方と添うてみたい。せめて一夜でも抱かれてみたい。
でも、問うてみたい。
お舟は身悶えします。
と、そこへ義峯がひとりで降りてきます。
連れの女が持病の癪を起し、薬を飲ませるのに白湯を所望したい、と。
はいはいただいま・・・と湯を沸かしながら、お舟は義峯をチラチラ。
見れば見るほど、いい男。意を決して、先ほどから気にかかっていたことを尋ねてみます。
「連れの女は、身共の妻」
義峯の返事に、お舟は急に不機嫌になり、
「近頃は落人の詮議が厳しく、夫婦連れは泊めるなと厳しいお達し。さあさあ、今すぐ出て行って下さいまし」
義峯は笑いながら、
「いやいやこれは旅の座興。あれは妹でござる」
とその場を取り繕います。たちまち機嫌を直したお舟は・・・
「あなた様さえよろしければ、明日もあさっても、10日でも20日でも、
5年も10年も、いえいえ100年でもお泊り下さい」
・・・と大喜び。
有頂天のお舟は、さらに義峯に一夜だけでも・・・と迫ります。
大ウケですが、けっこうきわどいセリフですね(笑)
最初は毅然と固辞していた義峯ですが・・・
情に絆されたのか、次第に態度を軟化させた・・・かに思えたその瞬間、
二人は雷にでも打たれたかのように同時に気絶してしまいます。
そこへ二階で臥せっていたはずのうてなが現れ、義峯の所持する新田家の白旗を揚げます。
すると二人は、不思議なことに息を吹き返します。
じぇじぇじぇじぇじぇ
これを見ていたのが>頓兵衛の下男の六蔵。
松竹新喜劇の小島慶四郎さん(古~っ^-^;)を思わせる憎めないアホキャラです(笑)
お尋ね者の義峯と気づいた六蔵はすぐにも奧の部屋に踏み込もうとします。
義興を溺死させたときは、親分の頓兵衛だけがいい目を見ましたが、今度は自分ひとりの手柄にしようという魂胆です。
お舟は彼女に気がある六蔵を・・・
「夫婦となれば、頓兵衛はあなたの父、自分ひとりの手柄とせず 父二人での手柄に」
・・・と、宥めすかして時間を稼ぎます。(つづく)
長浜の「ワイルドだろぉ~」といい、流行りネタを入れてくるの面白いですね(^^