2013年 11月 02日
米原曳山まつり 2013 その4 壽山組①
「妹背山婦女庭訓 三笠山御殿の場」
「大化の改新」を舞台にした有名な歌舞伎ですが、
前段がズバッと省略されています。
三角関係を構成するひとり、
橘姫が登場しなかったり、
素性を怪しまれて囚われていた男が
説明なしにふいに登場したりするので、
ストーリーを知らずに見ると、
まるで理解できないかもしれません・・・。
皇位を奪おうと伺う、蘇我一族と
天智天皇側との争いをタテ糸、
天智天皇を奉じる藤原鎌足の息子、
淡海(求女)と、その恋人お三輪、
そして蘇我入鹿の娘、橘姫との
三角関係をヨコ糸に物語は展開されます。
舞台は、入鹿が三笠山に新築した豪勢な館。
もう少し、前段を説明しておくと・・・
鎌足からの和睦の使者として鱶七という男が訪ねてきます。
この男、実は淡海の家来、金輪五郎。
素性を怪しんだ入鹿は、この男を館の奥に拘束します。
その頃、入鹿の妹橘姫が求女との逢瀬から戻って来ます。
着物の裾に赤い糸がついているのをいぶかしんだ官女たちが、
それを引き寄せると・・・というところから、舞台がはじまります。
たぐりたぐればくるくると、
糸に寄る身はささがにの、
雲井の庭に引かれ来る、
ぬしは床しの・・・
赤い糸の苧環(おだまき)を持った求女が現れます。
求女(実は藤原淡海)は、
自分に惚れた女が入鹿の妹、橘姫であることを知り、
切り殺そうとするのですが、
彼女が唯々諾々と討たれようとするのを見るや、
入鹿が奪った宝剣を取り戻すことを条件に、
夫婦の契りを約します。
・・・と、このあたりの事情も
舞台には登場しないので、ちょっとわかりにくい。
迷いはぐれし、かた鶉、
草の靡くをしるべにて、
いきせきお三輪は走り入り・・・
ブツクサ言いながら、
杉酒屋の娘、お三輪が登場します。
お三輪は」求女と恋仲ですが、
彼が淡海だということは知りません。
最近、求女のもとへ、
やんごとなき様子の女性が忍んできているという噂を聞いて、
やきもきしたお三輪>は、変わらぬ愛のしるしにと、
七夕に供えた赤い糸の苧環を、求女に渡し、
自分は白い糸の苧環を持っています。
しかし、求女はくだんの女性が気になるようで、
着物の裾へ苧環の赤糸をつけて後を追っていました。
求女から離れたくないお三輪は、
彼の裾に苧環の白糸をつけて追いかけていたのですが、
途中で糸が切れ、見失ってブツクサいっているのでした。
糸は切れながらも、
ようようお三輪御殿にたどりつきますが、
通りかかった豆腐買いの女中から
求女と橘姫との祝言がおこなわれると聞きます。
主ある人をば大胆な、
断りなしに惚れるとは、
どんな本にもありゃせまい。
女庭訓しつけかた、よう見やしゃんせ、
エたしなみなされ女中さん
逆上したお三輪は御殿の中へ駆け込もうとしますが、
イケズな官女に止められ、
おまけにさんざんイビられてしまいます。
このイジメシーンがけっこう長くつづきます。
こんなに長く引っ張るくらいなら、
前後の事情をきっちり説明するほうが
物語がわかりやすくなるのでは・・・とも思うのですが、
これもお三輪を屈辱に塗れさせ、
憤怒させる物語上の伏線になっています。
それに、ヒロインが同性たちに
執拗にいたぶられるシーンは、今も昔も人気が高い(笑)
さんざんいたぶられた上に
外へ放り出されたお三輪は、
失意のうちに家へ帰ろうとしますが、
「三国一の婿取りすました」
・・・の声に、様子が一変します。
エエ胴欲ぢゃ胴欲ぢゃ。
男は取られ、その上に、又恥かかされ、
何と堪えて居らりやうぞ。
思へば思へばつれない男。
憎いは此家の女めに、見返られたが口惜しい
乱れ髪に物凄い形相
(・・・という設定だと思いますが、さらに可愛くなってますね^‐^)
おのれおめおめ、添わせうか
お三輪は、何かに憑かれたように
御殿の奥へ駆け入ろうとします。
そこへ、なぜか監禁されていたはずの鱶七が現れ・・・。 <つづく>