2013年 11月 02日
米原曳山まつり 2013 その3 旭山組
産声をあげて以来、泣いたことがないという豪傑、武蔵坊弁慶。
その弁慶が声をあげて男泣きに泣いた理由とは・・・ご存知「御所桜堀川夜討 弁慶上使の場」。
旭山の曳山は、長浜神戸町で大工・藤岡重兵衛によってつくられたもので、後に米原に移されたものだそうです。
今年は当番山(一番山)で、三番叟からはじまります。
舞台は京、堀川の侍従太郎の館。
鎌倉の頼朝の使者として、武蔵坊弁慶がやってくるところからはじまります。
義経の妻、卿の君は、反逆人・平時忠の娘。
謀反の下心がないのなら、妻の首を差し出せ!
兄・頼朝は、義経に迫ります。
弁慶の使いとは、身重のため侍従太郎の館へ静養に来ている、その卿の君の首を討ち取ること。
弁慶と侍従太郎は一計を案じ、卿の君の身代わりに、腰元のしのぶの首を差し出すことを考えます。
「お主さまのためになるなら・・・」
・・・と、しのぶは承知しますが、たまたまご機嫌伺いに来ていた母・おわさが猛抗議。
母・おわさのくどきがはじまります。
この世にいるはずの父親に会わせるまで死なせるにはいかない・・・
18年まえの十六夜の月待ちの夜。
本陣の娘だったおわさは、泊まり客の稚児と褥を交わします。
その時に身ごもったのが、一人娘のしのぶ。
相手の振袖が片方ちぎれて手に残り、これを頼りに、一度の契りで子をもうけた深い縁の夫を訪ね歩きながら
苦労して娘を育てたいきさつを、紅い襦袢の片袖を見せて語ります。
ふいに、ふすま越しにしのぶを刺した者がいました。
おわさの物語を陰で聞いていた弁慶でした。
娘をもとに戻せ・・・と弁慶に詰め寄るおさわ。
泣きわめおわさを制し、弁慶が片肌を脱ぐと、おわさが持つ片袖と同じ振袖。
そんならお前が、あのときのお稚児さんかいなぁ
娘を殺された母の無念と、捜しあぐねていた夫にめぐり合えたときめきが交差する不思議なシーンです。
酒を飲みながら鑑賞していた旭山組の方々のなかから、
「この女、娘殺されてるのに色気づいてるで!」
・・と野次が飛びます(笑)
これが父様
・・・と、しのぶを揺り起こすおわさ。
しかし、瀕死のしのぶは、もう目も見えず、父娘の名乗り合いも果たせぬままこと切れてしまいます。
泣くのが辛いというが、泣くより辛いこともあるのだ・・・
そう嘯いていた弁慶も・・・
産声をあげてより流さぬ弁慶の涙、くれてやろう!
わが娘の亡骸をひしと抱きしめて、さめざめと泣くのでした・・・
しかし、弁慶には主人義経の窮地を救うという使命が・・・
威厳を正すと、侍従太郎に・・・
「卿の君(実はしのぶ)の首討って渡されよ」
と申し渡します。
侍従太郎は、しのぶの首を斬り落とすと、返す刀をおのが腹に突き立てます。
自分の首も討って出せば、偽首とさとられることもないだろう・・・と。
嘆くおわさ、侍従太郎の妻、花の井を振り切って、弁慶はふたつの首を抱えて館を去っていきます。
by dendoroubik
| 2013-11-02 15:07
| ◇米原曳山まつり
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