2013年 02月 17日
水海の田楽能舞 その2 田楽
「烏とび」
その名の通り、烏のような黒づくめの舞人が1人登場します。
「インーヤーハー」
の掛け声で、舞人が舞台を一周するだけの舞。
「中啓」という扇の一種を肩にかつぐように左右に振りあげながら、片足ずつ交互に跳びはねていきます。
これは大八洲の国造りを意味し、土地の区画を定めている動作をあらわすそうです。
生命を賦活させるような、深遠な雰囲気が漂いはじめます。
「祝詞」
狩衣に袴、烏帽子をかぶった翁が登場します。
「中啓」と「チリ」(先の奉書紙を挟んだ竹)をもっています。
囃子も謡もなく、今日ここで田楽能舞を奉納する意味を翁が朗々語りながら舞います。
さ候らえば東西鳴り高し最明寺殿の始正月のご祈祷に
何をか仕まつらんと各々寄りて詮議し給ふ
何々と申し候えどもこの御田楽にすぎめでたきことの
あるまじきと拠って評定し給ふ
最明寺殿、時頼のために田楽能舞を奉納しようと相談する様子が語られます・・・
「あまんじゃこ」
白、黒、赤のシャグマをかぶった3人の舞人が登場します。
手に持った「びんざさら」を掻き鳴らしながら、老人のように腰をかがめて舞台をまわります。
「ヤー、アンハー」
の掛け声と、力強い太鼓の音、びんざさらのジャラジャラいう音が単調に繰り返され、 いつしか不思議な世界に引き込まれていきます・・・
荒ぶる神を鎮め、世を清め祓う舞だそうです。
「阿満」
中啓とチリを持った異形の男が登場します。 『千と千尋』に登場する「顔なし」みたいな不気味な風貌。
笛が二人、太鼓と小鼓がそれぞれ1人の囃子。
農耕作業のあらましを述べたあと、チリを鈴に持ち替えて、後半は豊作を祝う舞を舞います。
このよろこびに神つかさ国御領所は富貴万福神は
あらせ給うぞや尚お尚お御はやし候
舞台を取り囲む多くの観衆のなかでこれを見ていたわけですが、
昔はこんなギャラリーなどはおらず、村人だけで執りおこなわれていたはずです。
何百年も、そんな風にひっそりとおこなわれていた様子を想像すると、その信仰の深さに慄然とする思いでした・・・