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江州天狗伝奇集 其の壱 美少年の小僧が天狗に攫われる話

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ドラキュラの嫌いなものといえば「太陽」「十字架」「ニンニク」・・・
(クリストファー・リーの苦悶に満ちた表情が浮かびます^-^)

では、天狗の苦手なものはご存じでしょうか・・・?



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犬上郡豊郷町食(あんじき)というところに
普門寺という禅宗(臨済宗妙心寺派)のお寺があります。

現在は田園地帯の集落のなか、
疎林に囲まれてひっそりと佇んでいますが、
むかしは回りの雑木林がもっと鬱蒼と生い茂り、
昼なお暗い「お化け屋敷」の異名があったそうです。

このお寺に宗門(そもん)という小僧さんがいました。
たいへん愛らしい顔立ちをした小僧さんで、
村人にもたいへん可愛がられていたそうです。

その宗門が、ある日、ふいに姿を消してしまいます。
和尚さんと村人が総出で捜索しますが、
三日経っても行方がしれません。

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4日目のこと。

いまは枯れてしまってもうありませんが、
方丈のまえに大きな松の木があったそうです。

その木の股にちょこんと座っている宗門の姿が。

梯子をかけて抱え降ろすと、
宗門はうつろな目をしこんな話をはじめます・・・

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美濃の殿さまは鷹狩がたいへんお好きで、またお上手でした。
それから、尾張の××村のお祭りはたいへんにぎやかで、
それはもう楽しいものでした・・・


どうやら宗門は天狗に抱きかかえられて、
あちこちを旅したにちがいない。

・・・和尚さんと村人たちはそう結論づけます。

しかも、その後もたびたび宗門は行方をくらまし、
数日後に松の木の枝に発見されることがつづきました。

そのたびに宗門は衰弱していく様子です。

なんとかしなければ、宗門は死んでしまう・・・
窮した和尚さんは、村人と相談して、
天狗がもっとも嫌うとされるものを、
宗門の身につけさせることにします。

なんと禅宗坊主に
村人のある女房の腰巻をはかせたのです。

天狗は女性の下着を不浄として忌み嫌う
・・・といわれていたからです。

それ以来、ふたたび宗門は
天狗に攫われることはなかったそうです。

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この話を聞いて思い浮かんだのは、
小僧さんを小脇に抱えて連れまわす天狗の楽しげな様子です。
天狗は小僧さんとの飛行を楽しんでいたのにちがいありません。

ちょっと男色の匂いがしなくもありませんね・・・。

女房の腰巻を穿かせたが、やはり天狗に連れ去られ、
小僧が嫌がって泣き叫ぶものだから、
その後、連れ去られなくなった。

・・・というバージョンもあります。

これなんか、よけいに男色を感じさせますね。

国学者の平田篤胤は、文政5年、
天狗にさらわれたという少年からの聞き書き
『仙境異聞』という本を出版しています。

後にこの少年を養子に迎えたり、
少年が神仙界に戻ると言ったときには、
天狗に宛てて教えを乞う書簡を持たせたりと、
本気で信じていた様子です。

少年との問答で、篤胤は、

 「天狗の世界にも男色はあるか?」

という問いかけをしています。
前後の質問からすると、やや唐突なこの問いに、
天狗と男色との のっぴきならない関係が
仄見えるように感じるのは、僕だけでしょうか・・・?


・・・というわけで、
滋賀県に伝わる天狗話を綴っていきたいと思いますが、
次回がいつになるかは まったくわかりません(笑)
Commented by うずら at 2013-02-18 11:10 x
天狗が、腰巻き嫌い!
しかも、その理由が・・・
腰巻きが不浄って言われる理由はわかるけど、
女性としては悲しいというか、腹立たしいとうか。
天狗は女の敵、やったんですかねぇ。
続き楽しみです。
今頃のコメントですいません。
Commented by dendoroubik at 2013-02-18 16:00
☆うずらさん

当時不浄とされていたものがブルセラショップ(…って まだあるのでしょうか^-^;)で値がついたりするのですから完全に時代は変わっているのでしょうねw
今となってはこういった男女差別も理解できませんが 戦国武将なんかの男色趣味もいまひとつピンときません…

あっ! もちろん「よく理解できる」って方もいらっしゃるでしょうけど(^-^;
by dendoroubik | 2013-02-07 17:36 | ◇江州天狗伝奇集 | Trackback | Comments(2)