2012年 10月 11日
米原曳山まつり 2012 その2
大和の国に、千年巧経る夫婦の古キツネがいました。
このキツネが鳴くと、必ず雨が降る
・・・という言い伝えがあったそうです。
平安のはじめ、都を旱魃が襲ったときのこと。
雨乞いのためにこの夫婦キツネは野狩りして捕らえられ
生皮を剥いで、鼓にされてしまいます。
キツネの霊力か、これをポンと打つと
見事に雨が降った…と伝えられます。
「初音の鼓」と名づけられたこの鼓は
永らく宝物として宮中にありましたが、
白河法王はこれを義経に与えます。
もちろん、酔狂で与えたわけではありません。
鼓の裏皮は義経 表皮は頼朝。
鼓を打て=頼朝を討て!
・・・という、ほのめかしですね。
あやふやな気持ちで鼓を受け取ってしまったことから
義経の悲劇がはじまります。
平家の娘を娶ったことを兄、頼朝に責められ、
卿の君は自害。
嫌疑をかけられた義経も都落ち。
吉野山に隠れたそんな義経のもとに、
愛妾、静御前が跡を追ってきます。
義経から託されていた「初音の鼓」をもって。
お供は家来の佐藤四郎兵衛忠信。
・・・実は、彼は生皮を剥がされて鼓にされた
夫婦キツネの一人息子のキツネ。
静御前の打つ鼓の音が
彼には父と母のやさしい呼び声に聞こえるのです。
恋しさのあまり忠信の姿にバケて吉野までお供してきたのでした・・・
霊山吉野の河連法眼(かわつら ほうげん)というお坊さんの家。
ここにかくまわれている義経。
己が境涯を詠嘆するところから芝居はスタートします。
そこへ静御前が到着したという報告が入ります。
家来の佐藤四郎兵衛忠信もいっしょだ
・・・と聞いて義経は訝ります。
佐藤忠信は、さきほどすでに単独で到着しています。
なぜ、静御前といっしょではないのかと詮議していたところでした。
忠信がふたり現れるとは面妖な!
これには仔細があるにちがいない!
ところで、静御前。
忠信にどこかおかしなところはなかったか?
そういえば・・・と語りだす静御前。
わたしが寂しさを紛らすために、
義経殿から預かった「初音の鼓」を打つと
不思議なことに、必ずどこからともなく忠信が現れるのです。
あまりに頻繁なことなので、どこかおかしい
・・・と常々感じていたのです・・・
よし。鼓で忠信を呼び出して詮議いたせ・・・・
義経は静御前に懐刀を手渡し、退室します。
ポン、ポン、ポン・・・と鼓を打つ静御前。
舞台上の階段から突如、現れる忠信。
これが最初の「しかけ」です。
忠信狐が現れたり・消えたりする
この「しかけ」がこの芝居の見所のひとつです。
静御前の詮議にシラを切ろうとする忠信。
さては・・・と切りかかろうとする静御前に、
実は・・・と忠信は身の上話をはじめます。
実はわたしは、この鼓にされた
夫婦キツネの一人息子。
静御前様が鼓を打つたびに、
その音が父、母のやさしい呼び声にも聞こえ、
恋しさのあまり忠信殿にバケてついてきたのです。
・・・と、白いキツネに早変わり。
訥々と身の上話をはじめます。
忠信様を霊力で遠ざけ、
自分が静様をお守りするつもりでした。
しかし、ホンモノの忠信様が現れたとなっては、
これ以上お供するのはご迷惑・・・
「お聞きになられましたか?」
「おお、聞いた」
奥の間に控えていた義経がふたたび登場します。
忠信ギツネは姿を消してしまいます。
この石灯篭に消えていく「しかけ」も楽しい^-^
「それにしても、不憫なキツネ。
いまいちど、呼び戻してやれ」
静は鼓を打ちます。
・・・が、打てども打てでも、もう鼓は音を出しません。
「霊力が消え失せたか・・・」
「鼓がなくとも、呼び戻す術を心得ております」
静は硯と筆をもって、襖に文字をしたためはじめます。
静が心 知るや知らずや
心が通じた…ということでしょうか、
襖がくるんと回転して忠信キツネが現れます。
子供のころ親と死に別れた自分は、
親孝行というものをした覚えがありません。
それが悲しくて、そして恥ずかしいのです。
せめて鼓の近くにいて親のために・・・
そして鼓を持つ義経様ののためにお役に立ちたい・・・
忠信キツネの述懐に、義経は打たれます。
思えば、義経もまた、幼少のころに父、義朝を失い、
親孝行をした覚えがありません。
父の代わりにとも慕い、仕えていた兄、頼朝には疎まれ、
いまは命さえ狙われる身の上。
孝行心に感心した義経は、
初音の鼓をキツネ忠信に与えるのでした。
(鼓を与える・・・という行為は、
おそらく義経が世俗的な権力に背を向けたことを
象徴的に表しているのでしょう。
義経には、もうこの先、平泉での死・・・しか待っていません・・・)
駿河次郎が、義経へ忠誠を誓っています。
それを影で見ていたキツネ忠信は、
姿は消しても、きっと義経をお守りす
・・・そう心に誓って去っていきます。
吉野の山に、ふたりの荒法師がやってきます。
敵方の覚範が寄越した討っ手です。
どこかユーモラスな立ち居振る舞い。
義経を討つように命じられているらしいのですが、
ちょっと弱腰です。
「義経には強い家来がたくさんいるらしい」
「いちばんは、つるつる頭の武蔵坊」
「忠信という家来は強いのか」
「これが強い。めっちゃ強い」
「ワイルドだな~」(笑)
そこに現れたのがキツネ忠信。
義経を狙う荒法師の追っ手のまえに立ちはだかります。
妖術を使っての立ち回りは、とてもファンダジー!
本来なら、荒法師を退治してしまうのですが、
この芝居では決着がつくまえに、
ふいにキツネ忠信が「さらば!」と叫んで、幕。
いやー、おもしろかったです。
夜の部で見たら、もっと妖艶さが増したんでしょうね・・・
7日の15時の回、子どもたちは堂々とした演技でしたよ。
始まる前、終わった後の、子どもたちが素に戻った時が、
なんとも微笑ましかったですね~
舞台に近いという雰囲気が良いですね。
また、夜の部を見てみたいなって思いました~。
ホンマに!
「山を見るなら長浜 芸を見るなら米原…といわれています」
米原曳山の紹介に そんなことが書いていますね
おそらく そんなことをいうのは 米原だけでしょうけど(^-^;
たしかに 公演回数が多いので 子供たちがノッてくるというのはあるのでしょうね
米原の夜の公演は一度しか見たことがないのですが
長浜や小松の子供歌舞伎も 夜になってくると ちょっと神がかってくるよう…
見ていて ゾクッとしますね(^O^)
それにしても 米原の観衆の少なさは いたたまれないですね
来年は いっしょに友人も連れて応援に行きましょう!