2011年 10月 19日
米原曳山まつり 旭山
北町の旭山組の演目は『鎌倉三代記 絹川村の場』
鎌倉時代・・・源頼朝亡きあと、
北条時政は、頼朝の遺児源頼家をないがしろにして
幕府の実権を握ろうと画策。
御家人との抗争を繰り広げ、
ついに戦の火蓋は切って落とされます。
ヒロイン・時姫は 鎌倉方の大将・北条時政の娘。
敵の京方の大将・三浦之助を恋慕い、
彼の母を絹川村の閑居で看病しています。
華麗な深紅の衣装は、敵方の大将を恋し、
そのために自分の父の殺害まで決意する
気の強さと情念を表しているのでしょうか・・・
「赤姫」とも呼ばれます。
されば風雅の歌人は
恋とや聞かん虫の音も
沢の蛙の声々も修羅の巷の戦い
・・・と戦場で負傷した三浦之助義村が
病気の母親のもとへ帰還します。
時姫は駆け寄って介抱しますが、
母の長門は障子を閉め切って会おうとしません。
武門に生まれながら戦場を離れるとは何事ぞ・・・と。
わが身を恥じた三浦之助は戦場に戻ろうとしますが、
時姫は彼を放そうとしません。
三浦之助は
時姫が敵の娘ゆえに信用できぬと冷たい言葉。
しかし、手負いの身ゆえか、一夜を明かすことにします。
思いは弱る後ろ髪
深夜、北条の使者、藤三郎を監視する富田六郎と、
藤三郎の妻・おくるが様子を見にやってきます。
そこへ藤三郎が現れ、
時姫に父のもとへ帰るように迫ります。
彼は時政から
「時姫を助けたら褒美に姫と夫婦にしてやる」
といわれたのだと告げます。
時姫は怒って短刀で切りつけようとします。
驚いた藤三郎は空井戸に飛び込みます。
明日を限りの夫の命、
疑われても添われいでも、思い極めた夫は一人
愛する男からは疑われ、
父からも見放されたと感じた時姫は、
思い悩んだ末、自害しようとします。
それを見た三浦之助は、
彼女が父を討つならば夫婦になると約束します。
時姫は泣く泣く受け入れます。
思案は如何にとせりかけられ、
どちらが重いと軽いとも、
恩と恋との義理詰めに、
詞は涙もろともに
重ねて申し合わせし通り計略外れず
三浦之助の呼びかけに、
槍を持って井戸から現れたのは藤三郎。
彼は、実は佐々木高綱。
時政を討つには時姫を利用するしかないと、
三浦之助と示し合せて藤三郎になりすまし、
芝居を打っていたのです。
「藤三郎」から「高綱」への早変わりも
この芝居の見どころのひとつ。
時姫が父を討つ決意をしたからには、
反撃の用意は万端整った・・・と喜ぶ三浦之助と高綱。
(ここでは省略されていますが・・・
元本では、母・長門は時姫に実の親を討たせる申し訳に
わざと彼女の手にかかって息絶えます。
おくるも すでに亡くなっている夫
藤三郎の跡を追って自害します。)
時姫は未練を捨てて父を討つ覚悟を固め、
高綱とともに時政のいる陣所へ、
三浦之助も傷ついた身体を押して戦場へと、それぞれ赴きます・・・
この段はここで終わりますが、
ちなみに物語のその後の展開は・・・
三浦之助は討死。
時姫はいったんは父時政を討つと決心したものの果たせず自害。
高綱は琉球へと逃れていくことになります。
登場人物がすべて不幸な末路をたどる
なんともやる瀬ない物語ですね・・・
この物語はもともと、徳川家康の豊臣家攻略を、
北条氏が源氏や朝廷を圧倒した鎌倉時代に置き換えたもの。
大敵に知略で挑む佐々木高綱には
真田幸村が仮託されています。