出町子供歌舞伎曳山祭り特別公演

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全国に8ケ所あるという曳山のうえで演じられる子供歌舞伎。

富山県砺波市の市街地にある出町神明宮の春季祭礼として
毎年4月29、30日におこなわれる「出町子供歌舞伎曳山まつり」はそのひとつ。
かつて富山県内には9ケ所もの曳山子供歌舞伎がおこなわれていたそうですが
いまも伝承されているのはここだけです。

出町には曳山が3輛あり、毎年、輪番でひとつの町が子供歌舞伎を上演。
今年の出番山は「西町」。行きたかったのですが都合がつかず
5月3日に「砺波文化会館」でおこなわれた「特別公演」を見に行きました。

祭礼の日に、曳山上で見るに如くはありませんが
ステージ上の子供役者たちの熱演もすばらしいものでした。



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今回の振付は前回も西町の振付をされた市川団四郎師匠。

3年まえが出町でのはじめての指導で
そのときの芸題は『一谷嫩軍記 須磨浦の段 組打の場』
出町ではこの芸題をはじめ8つほどの歴史物の定番を
繰り返し上演されてきたようですが世話物は珍しく
『壺坂霊験記』はおそらくはじめての上演になると思います。

団四郎師匠はすでにこの芸題を長浜、米原、小松でも指導され
自家薬籠中のものというべき名作です。

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長浜、米原、小松も出だしは3人の掛取りのこのポーズでした(笑)

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幼い頃に両親を亡くし叔父の家に引き取られたお里。
「三ツ違いの兄さん」と慕ういとこの沢市は大病を患って盲目に。
結婚して3年のふたりはつましく暮らしています。

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しかし暮らし向きは厳しく
今日も掛け取りが来て借金のカタに乏しい家財道具を物色です。

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そこへ現れた遊び人の鴈九郎。気前よく借金を立て替えてやります。

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「余ったお金で何が食べたい?」
「わてはクリームパン」
「わたしはりんご」

「アポーパン」(笑)

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鴈九郎が気前よく立て替えてやっったのは義侠心ではなく
お里に横恋慕していてわがものにせんとの下ごごろから。
沢市と別れてオレといっしょになれと迫る鴈九郎に
窮したお里は暮れ六つにまた来てくれと言い逃れしてしまいます。

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三味線の出稽古から帰ってきた沢市。

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なぜかとても不機嫌です。

盲目の沢市が耳にするのは、お里の器量がいいという話ばかり。
この百日の間、毎晩七ツから先ふと目覚めて寝床に手をやっても
そこに一度としてお里の姿があったためしがありません。
きっと他に男がいて、夜中にこっそり逢引をしているのだと疑っているのでした。

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そりゃ胴欲な沢市様。

いかに賤しい私じゃとて 現在お前を振捨てて
ほかに男を持つやうな そんな女子と思ふてか

そりゃ聞こえませぬ聞こえませぬ 聞こえませぬはいなあ・・・

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一旦殿御の沢市様 たとへ火の中水の底 未来までも夫婦じゃと

(思ふばかりかコレ申し お前のお目をなおさんと)

この壺坂の観音様へ 明けの七つの鐘を聞き
そつと抜け出でただ一人 山路いとはず三年越し
せつなる願ひに御利生の ないとはいかなる報ひぞや

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観音様も聞こえぬと 今も今とて恨んでゐた わしの心も知らずして
ほかに男があるやうに 今のお前の一言が 私は腹が立つわいの

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壺坂寺の観音さまに願掛けをして今日がその満願の日。
お里を疑ったことを恥じた沢市は、いっしょにお参りすることに・・・

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そこへ「暮れ六ツ」にという空手形を信じてやって来た雁九郎。

沢市と雁九郎はひとり二役で、出たり入ったりの早変わりが見ものです。
お里の姿が見当たらず、謀られたとカンカンに怒ってふたりを追いかけます。

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ここまでが「内の段」つづいて「山の段」です。

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ふたりで壺坂寺の観音堂へお参り。

沢市は自分は今日からここで3日間断食祈願するから
いったん家へ戻って用事を済ませてくるようにとお里を帰します。

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ひとりになった沢市はお里を疑ったことを詫びて泣き伏します。

女房が信心凝らしてもなんの利益もないものをいつまで生きても詮ない。
せめてお里を自由の身にしてやろうと谷底へ身を投げる決意をします。

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南無阿弥陀仏。

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胸騒ぎがして駆け戻ったお里は・・・

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残された杖と谷底に横たわる沢市を見つけて悲嘆に暮れます。

目の見えぬ沢市があの世で杖もなく誰が手を引き導くのかと
自分もいっしょに身を投げようとしたところへ・・・

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「可愛さ余って憎さ百倍」現れたのは、刃物を手にした鴈九郎。

切りつけようとするその手を逃れて谷底へ身を投げるお里。
舌打ちして谷底を見下ろしていると、観音堂の鈴緒がヒュルヒュルと
不思議な霊力で伸びてきて首に巻きつき鴈九郎は絶命してしまいます。

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観音さまのバチが当たるはあたりまえ。
あたりまえ あたりまえ あたり前田のクラッカ~~(笑)

ちなみに、会場でいただいたパンフレットによると
お仙さんは(右)は沢市さんの妹、善六さんはお里ちゃんの弟だそうです。

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谷底で倒れる二人のもとへ、
壷阪寺の本尊、十一面観音が現れます。

「両人ながら 今日に迫る命なれども
 妻の貞心 または念ずる功徳にて 寿命を延ばし 与うべし」

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気を取り戻した沢市とお里。

「ええ あの・・・ほんにこりゃ眼が開いている
 おお 眼が開いた 眼が開いた
 観音様のお陰・・・有り難うござります」

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「むむ・・そしてあの・・・お前はまあ どなたじゃえ?」
「どなたとは何ぞいの これ 私はお前の女房じゃわいな」
「ええ? あのお前がわしの女房? ちょ ちょっと待ってや」

・・・と沢市は目を瞑り・・・

「お里~」
「沢市っつあん」

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「これはしたり 初めてお目にかかります(笑)」

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「お客さーん 目が見えたー」

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沢市とお里が手に手を取って踊る「萬歳」は三味線が2棹加わっての大合奏。
浄瑠璃の盛んな砺波ならではの粋な演出です。これがよかったです。

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お礼申すや神や仏

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万見せ給ふはこれひとへに観世音の

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これひとえに観音の 誓ひの重きは岩を建て

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水をたたへて壺坂の庭の 砂も浄土なるらん御示し 

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ありがたかりける御法なり

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長浜、米原では役者は全員男の子、小松では女の子。
こちらは女性は女の子、男性は男の子が演じて新鮮でした。

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沢市・お里のふたりはとても洒脱で上手かったです。


by dendoroubik | 2017-05-11 07:00 | ◆越中の祭 呉西 | Trackback | Comments(2)
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Commented by otti468 at 2017-05-12 00:15
曳山の上で行われる子ども歌舞伎は
全国で8カ所もあるんですね~
すごいですね~☆
長浜だけしか知らないなんて情けないですよね(..;)~
情報の深さにいつも感心しています(*^▽^*)
Commented by dendoroubik at 2017-05-12 23:40
☆ottiさん

いま 石川県小松の曳山子供歌舞伎に来ています(笑)

全国に8ケ所・・・でも昔はもっとあったんでしょうね~
そのうち6ケ所を観ましたが それぞれすばらしく
なにより町衆の心意気がどこもイカしていて
なるほどだから残っているのだなと思うところばかりです
なかでも 観客がいちばん熱心なのは小松です
今日も平日の本番まえなのにどの回も満席でした