垂井曳軕まつり その4

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三番軕、西町「攀鱗閣」
芸題は「双蝶々曲輪日記 八幡里引窓の場」

衣装も寒色ばかりで派手なところはなく、
アクションも少ない地味な台詞劇ですけれど
引窓の開け閉めによる部屋の明暗、
歳時や時刻の移り変わりが物語に絡まりながら、
人情の機微を映し出す、心に沁みる名篇です。



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石清水八幡宮にほど近い八幡の里、南与兵衛の家。

明日は八幡宮で放生会が行われる、十五夜の前夜です。
嫁のお早と母のお幸が月見の支度をしています。
お幸は後添いで、夫はすでに亡くなっています。
与兵衛は義理の息子。お幸はその嫁です。

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濡髪長五郎が人目を忍んで訪ねてきます。

彼はお幸が再婚する前に里子に出した実の息子。
大坂で人気力士になっていたのですが、
義侠心が災いして、トラブルに巻き込まれ
やむなく人を殺めてしまいます。

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おたずねもの長五郎は、死ぬまえに、
母親にひと目会いたいとやってきたのです。

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濡髪を二階で休ませたところへ、
浪人生活に別れを告げ仕官が決まったと、
与兵衛がうれしい知らせをもって帰ってきます。
亡父と同じ代官、名も継いで南方十次兵衛。
息子の出世に大喜びしたお幸とお早でしたが、
その初仕事が、濡髪長五郎を捕縛することと聞いて、
ふたりの胸は塞がれる思い・・・

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濡髪はお前より強くて危ないから、
探索をやめろとお幸の言うことは支離滅裂。

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夜の間は土地勘のある十次兵衛が村を詮議し、
夜が明けたら平岡丹平が探索することが命じられています。

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十次兵衛がふと、庭の手水鉢に目を向けると、
そこに映っていたのは、二階にいる濡髪の姿。

気づいて、あわてて引窓の紐を引いて閉めるのを、
訝る十次兵衛に、最早日の暮れと言うお早。
日の暮れならば、我が役目、探索に出ると言う十次兵衛。
あわてて引窓をガラリ・・・
開けて言われぬ女房の心遣いぞせつなけれ。

お幸はコツコツ貯めていた金を差し出し、
濡髪の人相書を売ってくれと言いだします。

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十次兵衛はハタと勘づきます。

母には幼い頃に里子に出した実の息子がいて、
二階にいる男こそ、その濡髪に他ならないことを。

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  イやナニ母者人 人を殺めて立ち退く曲者
  よもやこの辺りにはおりますまい
  大方 河内へ越ゆる抜け道は 狐川を左へとり
  右へ渡って山越に 右へ渡って山越に・・・

二階の濡髪にわざと聞こえるように
さりげなく逃げ道を教える十次兵衛。

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水臭い・・・

十次兵衛が悲しいのは、
せっかく手に入れた武士の身分を捨てることよりも、
親子なのに母が自分に隠し事をしていること.

なぜ、何もかも打ち明けて、相談してくれぬのか・・・

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義弟の親切が身にこたえ、思わず飛び出そうとする濡髪。
捕らえられて手柄を立てさせる他ないと・・・

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そんなことをしたら自分が死ぬ・・・
頑なにそう言い切る母親の気持ちほだされて、
面相を変えるために、大銀杏を切る覚悟。

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  せめて親への孝行に
  逃げられるだけ逃げてくれ
  生きられるだけ生きてたも

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窓の外から十次兵衛が、路銀の包みを投げつけると・・・

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包みは濡髪の頬をかすめて、ホクロをけずり落とし、
どこから見ても別人・・・

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一人ならず 二人ならず 四人までも殺した科人
助かる筋はござりませぬ
形見と思い母者人
お前の手で縄をかけ 与兵衛殿へ手渡しして、
ようお礼をおっしゃれや 
ヤ ヤ そうのうては未来にござる十次兵衛殿へ
こなたは義理が立ちますまいがな

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お幸も心得ちがいに気づいて、
泣く泣く十次兵衛に引き渡す覚悟を決めます。

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お幸 「サア 覚悟はよいか」
濡髪 「待ち兼ねておりやんす」

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濡髪の長五郎を召し捕った
十次兵衛は居やらぬか 受け取って手柄に召され

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召し捕ったの声を聴いて、入ってきた十次兵衛。
「よくやった」と女房や母親をほめながら、
「三尺残して切るが古例」と縄を切ってしまいます。

縄が切れて、開く引窓。
仲秋の月が天窓から煌々と差し込み、
あたかも夜明けを迎えたような明るさ。

  「南無三宝、夜が明けた」

自分の役目は夜明けまで。
そして十五日の今日は生き物を放す放生会。
恩に着ずとも、どこへなと行きやがれ・・・

しかし刻はまだ九ツ。
明け六ツには、まだ三ツあるはず・・・

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濡髪 「残る三ツは」 
与兵衛「母への進上」

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濡髪 「重なるご恩は」
与兵衛「それも言わずに さらばさらば」

そっと抜け道をさして落ちていく濡髪・・・

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芸児たちの抑えた、品のある芝居がとてもよかったです。

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初めての垂井。三題とも、とても心に残りました。
来年が楽しみです・・・
by dendoroubik | 2016-05-16 09:16 | ◆美濃の祭 | Trackback | Comments(0)
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