長浜曳山まつり 2016 その5 妹背山婦女庭訓 三笠山御殿の場

c0196076_0211331.jpg

常磐山「妹背山婦女庭訓 三笠山御殿」

3年まえの米原曳山まつりではじめて見ましたが、
振付はそのときと同じ川村和彦氏。

⇒米原曳山まつり 2013 その4 壽山組①
⇒米原曳山まつり 2013 その5 壽山組②




c0196076_023137.jpg

見ているだけでわからない、というややこしい物語なので、
まず舞台方からあらすじの紹介があります・・・。
が、これを聞いてもわからない(笑)

c0196076_0233665.jpg

蘇我入鹿によって奪われた皇位を
藤原鎌足の息子、淡海らが取り戻す・・・という物語をタテ糸
淡海と入鹿の娘、橘姫と杉酒屋の娘、お三輪との三角関係を
ヨコ糸に物語が紡がれるのですが、出てくるのはお三輪だけ
・・・というのがわかりにくさの第一。

c0196076_028295.jpg

入鹿は白牡鹿の生き血を飲んだ母から生まれた子。
爪黒の鹿の血と「凝着の相」(嫉妬に狂った顔)をした
女の生き血を混ぜたものを笛に注いで吹けば、
鹿の正体が顕れて、そのときが襲撃のチャンス
・・・というグロテスクな設定も理解しかねます(笑)

そして、そのために殺された女が、
愛する男のために死ぬことを喜ぶ
という心情も、どうにも共感できません。
哀切に涙をしぼられることも、
メデタシメデタシと胸を撫で下ろすこともできません。

c0196076_0354241.jpg

それでも、お三輪を演じる役者が、
徐々に「凝着の相」になってゆく様には魅了されてしまうのです。

c0196076_6591537.jpg

お三輪は愛しい求女(実は藤原淡海)に括りつけた糸が
途中で切れて迷いながらも御殿にたどりつきます。

c0196076_0305281.jpg

通りかかった豆腐買いの女中から、
求女と、恋敵、橘姫との祝言がおこなわれると聞き、
お三輪は悋気に燃えあがります。

c0196076_035308.jpg

立派な御殿女中姿の女性が、岡持ちを持って
豆腐を買いにいくところだというのも、
説明がなければなんだかわかりませんね(笑)
こういう設定も、この話のわかりにくいところかもしれません。

女中、おむらを演じるのは5歳の男の子。
ギャラリーからの歓声に、
ニヤリと笑ったりするところが愛くるしい。

c0196076_0351892.jpg

御殿へ乗り込む決意をするお三輪。

c0196076_0373831.jpg

ちなみに、藤原淡海と結婚する橘姫も、
政敵同士であることを知っていったんは討たれる覚悟をし、
入鹿が藤原家から奪った三種の神器のひとつを
奪い返すことを条件に妻となるわけですから、
あまり幸福とはいえません・・・が、お三輪はそのことを知りません。

c0196076_040047.jpg

官女たちに身咎められてしまいます。

c0196076_0382570.jpg

c0196076_0393562.jpg

さんざんに嬲られるお三輪。

c0196076_0265334.jpg

お三輪が官女たちに甚振られるシーンが、
芝居のほとんどを占めるような印象をもつほど、
このイジメが執拗に繰り返されます。

c0196076_7162348.jpg

心傷つき帰ろうとするお三輪の耳に、

  三国一の婿とりすました

と、花嫁花婿をはやす声が聞こえてきます。

c0196076_041163.jpg

髪振り乱して半狂乱となったお三輪が
奥へ踏み込もうとししたそのとき、
御殿に囚われていた鱶七が現れて立ちふさがり・・・
(その説明がないので、唐突に感じられます)

c0196076_0425795.jpg

いきなりお三輪の脇腹を刀で刺します。

c0196076_7345326.jpg

c0196076_7294797.jpg

  女悦べ。それでこそ天晴高家の北の方、
  命捨てたる故により、汝が思う御方の手柄となり
  入鹿を滅ぼす術の一つ、オゝ出かしたなあ!

求女の本当の正体は藤原淡海。
鱶七は淡海の家来の金輪五郎。
お前は嫉妬に狂った顔をしているから
不憫ながらも切ったのだ。
その生血を笛に注ぎ、吹けば、
愛する淡海さまを勝利に導くとこになるのだ。
りっぱな働きをしたお前は、
やはり淡海さまの奥方にふさわしい娘。
よかったな! でかしたな!

c0196076_0451786.jpg

知らない男からいきなり切りつけられて、
そんな突拍子のないことを説かれても、
誰が信用するものかとも思うのですけれど(笑)

c0196076_051195.jpg

c0196076_0565560.jpg

  あなたのお為になる事なら死んでも嬉しい忝い。
  とは云ふものの今一度どうぞお顔が拝みたい。
  たとへこの世は縁薄くと未来は添ふて給はれ。
  そして苧環を手にすると"この主様には逢はれぬか、
  どうぞ尋ねて求女さま。
  もう目が見えぬ、懐しい恋し・・・

自分の死が愛する求女の手柄になる、
とお三輪は喜びながら苧環を抱いて息絶えるのです。

c0196076_0575643.jpg

思えば、淡海とお三輪は身分ちがいの恋なので、
現世で結ばれることはなかったのですけれど・・・

c0196076_0331592.jpg

c0196076_0324613.jpg

涙も共感も誘われることはありませんでしたが、
とても不思議な余韻だけがの残ります・・・

c0196076_773768.jpg

視覚的な美しさと、子ども役者たちのすばらしい熱演のためでしょうか。
トラックバックURL : http://gejideji.exblog.jp/tb/25553145
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by すぺいん人 at 2016-04-27 23:28 x
四つとも楽しませていただきました♪
ありがとうございました♥

これだけ有名な話なのに、実は私はこれを見たことが無いんです(←そもそも妹背山をどの話も見たことがありません・汗)
ストーリーは知ってるけど、、、ぎちゃくの相とか「なんじゃそりゃー!!!」ですよね(笑)。
女官にさんざん虐められた上にいきなり刺されて「よろこべっ!」っつわれて喜べるかぁーっ!!!って、文字だけだと絶対なるんですけど、
そんな理不尽で意味が分からん話でも、そこに役者が加わると、不思議と「あ~、、、芝居見たなあ」って充実感みたいな余韻を感じてしまうんだと思います。

長浜で以前、「弁慶上使」を初めて見たときもストーリーは「これは無いわ~」って思ってたんですけど、子供たちの熱演が加わって、不思議な感覚になりました(笑)。
Commented by dendoroubik at 2016-04-28 12:17
☆すぺいん人さん

おつき合いいただきまして ありがとうございます

「女よろこべ!」のセリフに
僕の後ろで見ていた女性が「それはないわ」と呟いてました(笑)

先日 橋本治の「義太夫を聞こう」という本を読んでいると
「山の段」の写真を見て なんてキレイなんだ!
と歌舞伎を見に行ったら 延々とそのキレイな画面がつづき
退屈で眠ってしまった・・・とありました(笑)
そんな風に感性がハジキ返されたら もう入口はないですけれど
心理的には理解できなくても
感性が許してしまうというのはありますよね
これなんて 心理的にも道徳的にも
決して容認できない話なのに不思議と魅惑されてしまうんですね
by dendoroubik | 2016-04-27 21:46 | ◇長浜曳山まつり | Trackback | Comments(2)