深瀬でくまわし

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石川県白山市の深瀬と東二口というふたつの地域で
「でくまわし」という、芸能が伝承されています。
(ともに国指定重要無形民俗文化財)

深瀬の「でくまわし」は、いまから300年以上まえ
冬の地方巡業にきていた大坂の人形遣いの一座が
豪雪で立ち往生していたところをこの村の人々に助けられ
そのお礼として「木偶(でく)」とその「まわし技法」を伝授したものといわれ
一方、東二口では、商売で大坂を訪れた村人が
人形浄瑠璃に感激して、持ち帰り広めたもの、・・・という口承があるそうです。

「でくまわし保存会館」でおこなわれた深瀬でくまわしです。




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胴体の十文字の骨組みに藁縄を巻き頭をつけ、衣装をつけただけの素朴な人形です。
腰部の後ろから両手をさし込んでまわす一人遣いです。

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文楽人形の指先を動かせるようになったりのは、やっと18世紀のはじめにすぎません。
眉毛を動かせるようになったり(1741年)足をつけるようになったのは17世紀後半。
目玉がひっくり返ったりする、お馴染みのからくりが登場するのは、ずっと後のことで
近松門左衛門が活躍した元禄のころの人形は、とてもシンプルなものだったのでしょう。
おそらくその様式に近いのが、この「でくまわし」・・・

・・・というような趣旨のことを、
調査に来ておられた早稲田大学の先生が解説されていました。

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古態を残しているだけでなく、もうひとつ興味深いのは
今回上演される『仮名手本忠臣蔵』のような
近松よりも半世紀後の作品がレパートリーにあること・・・とも。

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300年のあいだには、中断などもあったのでしょうが
新しい演目を取り入れながら伝承されている、というのが、やはり、スゴイことですね・・・

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そして、もうひとつスゴイな・・・と思うことがあります。

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「でくまわし」の伝承される旧尾口村深瀬の方々は
手取川ダムの建設により立ち退きを余儀なくされ
この「深瀬新町」へ移住されてきたのだそうです。

人形たちともども、この新天地に移られたのですね。

このおばあちゃんは、旧尾口村深瀬出身で
この日「でくまわし」を見るために、こちらへ来られたそうです。

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「でくまわし」保存会館に飾られていた写真。

右が尾口村深瀬・・・でしょうか。
真ん中は、上演されていたお寺とのこと。

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こちらでは「源氏烏帽子折初段」を改変したものが、三番叟として、まず披露されます。

深瀬でくまわしには三味線などは使われず
太夫の語りと、まわし手の足踏みの音のみですべてが表現されます。

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『仮名手本忠臣蔵 五段』

猪猟にでていた早野勘平(萱野三平)。
雨に祟られ、湿った銃を乾かすため、旅人に提灯の火を無心したところ
なんとその男はかつてともに浅野家に仕えていた千崎弥五郎(神崎弥五郎)。

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主君の無念を晴らすため、ぜひ仇討の連判状に加えて欲しいと頼む勘平。
弥五郎は、主君の石碑建立のための御用金を集めているだけだ、とごまかしますが
それを承知で自分も御用金を集めようと迫ります。
さらに、義父、与市兵衛がなんとしても自分を、もとの武士に戻って欲しいと望んでいることを語ります。
勘平の思いを見定めた与市兵衛は、明後日に連判状を持っていくと約束します。

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勘平のために用立てた金を懐に
山崎街道を帰る与市兵衛に、悪党定九郎が襲いかかります。
娘を売ってまで用立てた金・・・見逃してくれと懇願しますが
是非もなく与市兵衛は刺殺され、金を奪われてしまいます。

・・・とそこへ、猪が突入。

会場へ向かってキャンディーやチョコレートが雨あられ(笑)
観衆がどよめき、一瞬、なにがおこったのかわからないまま
舞台を見返すと、勘平の放った弾丸が、定九郎を射抜いています。

予想もしなかった演出。
とっさのことに、カメラに収められなかったのが残念です(笑)

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駆けつけた勘平は、自分が射止めたのが、猪ではなく人であることに気づき狼狽しますが
暗闇ゆえ誰ともわからず抱き起してみると、手に金を持ってるので
これ天の助けと誰と確かめもせずその金を手に、家路を急ぐのでした・・・

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『仮名手本忠臣蔵 六段』

一文字茶屋から迎えがきます。

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身売りされるために身支度をととのえるおかる。 父の帰りを母と待っています・・・

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せめて父が帰るまで・・・と懇願する母に
一文字屋は、すぐに引き渡すようにと非情に言い渡します。

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そこへ帰宅した勘平。

一文字屋は、勘平の手にした縞の財布を見てこう言います。

身売りの金の半分五十両を先に渡し、残り五十両は娘と引き換えに渡すことになっている。
父親はたしかに、その縞の財布に五十両を入れて帰っていった。その財布こそ、確かな証拠・・・と。

それを聞いて勘平は、もしや自分が射殺したのは、他ならぬ義父ではなかったか、と怖れおののきます。

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泣き伏しながら連れ去られるおかる・・・

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ほどなくして、猟師仲間が戸板に乗せた義父、与市兵衛の亡骸を運びこんできます。
縞の財布を持ち帰った勘平に疑念を抱いた母は、取り乱して、勘平を親殺しと責め立てます。

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千崎弥五郎が、原郷右衛門(原惣右衛門)を伴って、約束通り連判状を持ってやってきます。

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事情を知って原郷右衛門も責め立て・・・

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勘平は、いたたまれなくなって切腹。

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仔細を聞いた弥五郎が与市兵衛の遺体を検分すると
弾疵ではなく、刀の刺し疵であることがわかります。
そういえば、さきほど通りがかりに弾丸に倒れていたのは定九郎・・・

親殺しどころか、親の仇を討ったことになります。

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汚名を雪いだ勘平は己が血で連判状に血判を押し、咽を掻き切って息絶えます・・・

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残された母は、自分も殺してくれと乞いますが、
その金でふたりの菩提を弔ってくれ、と言い残し、弥五郎と郷右衛門は立ち去ります。

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最後に全キャストが登場し、大合唱。

  縞の財布が気にかかる~
  ちょ~い ちょ~い♪

まるでマキノ映画のミュージカルのような楽しさ!

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あっという間の1時間半。
見終わるころには、このまま七段目九段目も見たい
・・・なんて思わせる充実でした(笑)

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自動車で出向いたのですけれど、住宅地なので専用の駐車場などはなく
地元の案内役の方に問い合わせると、ご親切にも自宅の駐車場を貸してくださいました。

もうこの時点で、きっとすばらしいものにちがいない
・・・という確信が湧き、事実、その通りのものでした。

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Commented by すぺいん人 at 2016-02-23 23:59 x
すごく楽しそう!!
語りと足の音で表現というのも面白いですね♪\(^o^)/

定九郎が赤くて悪そうな顔してる~(笑)!!

歴史の中で進化しながら受け継がれてきた芸能なんですね♪( 〃▽〃)
いつか見に行きたいです!( ☆∀☆)

それにしてもdendoroubikさん、九段目が見たいとは通ですね( ̄▽ ̄)b
Commented by dendoroubik at 2016-02-24 00:53
☆すぺいん人さん

出かけるまえは ひょっとして退屈かも
・・・なんて思わないでもなかったのですけれど
見終わるころには もっと見てたい!
という欲望にとらわれるほどでした
歌舞伎好きで ひんここ祭りに痺れる
すぺいん人さんのような人には必見です(笑)
定九郎が倒れるシーンのスペクタルには膝を打ちました
そしてラストの大合唱・・・いやあ 楽しかったです!
Commented by ei5184 at 2016-02-24 06:34
全国的には殆ど無名の? この様な行事を
よくご存知ですね~! まずその事に驚きと 感心しました。
内容も初めての方にも判り易い忠臣蔵とは
きっと観客も楽しいひと時だったでしょう。

今週末、初めての見学に出かけてみようかと思っています。
Commented by dendoroubik at 2016-02-24 20:22
☆eiさん

重要無形民俗文化財に指定されているとはいえ
80人も入ればいっぱいになるような公民館での公演ですので
「知られていない」
・・・という部類に入るのかもしれませんけれど
演者と観衆の熱気はすばらしかったです

週末の奥越の天気予報は 曇りときどき雪
あの祭りを見るには ベストのコンディションだと思います
ただ やっぱりとても寒そうですね(笑)
Commented by maturi-baka at 2016-02-24 22:04 x
dendoroubikさんこんばんは
 でくまわし、ご存知でしたか。さすがです。
小松にいた時に家族で見に行った事があります。説明の通り伝統がありますが、
見ていて何かユーモラスでもあり、楽しかった記憶があります。いい意味で田舎の
いい味が出ています。
 さて、今週ですね!! 勝山さぎっちょでお会いいたしませう。
Commented by dendoroubik at 2016-02-24 22:20
☆maturi-bakaさん

祭りでなにより楽しいのは
その土地ならではの人情が凝縮してるとこですね
伝統芸能・・・といっても 楽しくなければ
義務感だけでつづくはずもなく
「深瀬新町」という ちょっと無機質な新興住宅街で
こんな楽しい芸能が脈々と受け継がれていることにシビれました

勝山は 今年やっと雪が見られそうで楽しみですね(笑)
by dendoroubik | 2016-02-23 22:57 | ◆加賀の祭 | Trackback | Comments(6)