米原曳山まつり 2014 松翁山

c0196076_1134025.jpg

滋賀県米原市、湯谷神社の秋の祭礼、
米原曳山まつりでは、3基ある曳山のうち
毎年、当番山で子供歌舞伎が上演されます。

今年の当番山は旭山・・・松翁山も自主参加、
ふたつの子供歌舞伎が奉納されていました。

松翁山の外題は 『壷坂霊験記』・・・。



c0196076_2253188.jpg

振り付けは、もちろん市川団四郎師匠です。

昨年の長浜曳山まつりでも、
師匠の演出で『壷坂霊験記』が上演されていました。

今年、師匠の演出する子供歌舞伎を見るのは、
「出町子供歌舞伎曳山まつり」
 「小松お旅まつり」につづいて3本目です。

c0196076_11185793.jpg

祭りの3日間、同じ滋賀県内、竜王町で、
33年に1度おこなわれる祭りがあり、これを見るため、
子供歌舞伎をゆっくりと鑑賞する時間がありませんでした。

松翁山に出演する5名の役者のうち、
3名は6年生で、今年で子供歌舞伎は卒業。
主役の男の子は、1年生のときに演じた三番叟から、
ずっと見てきたことになります。
最後の舞台をどうしても見たくて、
竜王の祭りを途中で切り上げ、
宵宮の夜の公演を見に、米原まで駆けつけました・・・。

c0196076_2254648.jpg

幼い頃に両親を亡くしたお里は、叔父に引き取られ、
いとこの沢市といっしょに育てられます。

お里は沢市を「三つ違いの兄さん」と慕い、
疱瘡が原因で目が見えなくなった定市と夫婦に。

しかし、暮らし向きは苦しく、
この日も3人の借金取りが押しかけてきます。

借りたお金は返さなきゃ、ダメよ~、ダメダメ!(笑)

c0196076_2391420.jpg

借金を返してもらえそうもないと悟った3人が、
仕方なく家財道具を物色じはじめると、
屏風のかげから雁九郎がのっそり姿を現します。

遊び人の雁九郎はお里に横恋慕。
金の肩代わりをする代わりに、
沢市と別れて、自分といっしょになれと迫ります。
しばらく待ってくれ・・・とその場を取り繕うお里・・・。

c0196076_10191444.jpg

沢市は雁九郎と一人二役です。

c0196076_2263178.jpg

琴や三味線を教えて暮らしを立てる沢市。
近所の人に稽古をつけてきて、帰宅。

とても不機嫌です。

目の見えない沢市が耳にするのは、
お里の器量がよい・・・という話ばかり。
そういえば、夫婦になって3年、
お里は決まって明方に部屋を抜け出してゆきます。

他に男ができたのでは・・・と問い詰める沢市に、
壷坂の観音様に、目が見えるようにと願をかけ、
3年越しでお参りしているのだと打ち明けます。
そして、今日がその満願の日・・・。

そんなお里を疑ったことを恥じた沢市は、
自分も一緒に観音様にお参りをして、
3日間の断食をすると言い出します。

c0196076_2265927.jpg

妻は夫をいたわりつ~、夫は妻に慕いつつ~

有名なこの文句は浪曲のものなので、芝居には出てきません(笑)

c0196076_2271697.jpg

お里を帰らせ、壷坂寺でひとりになった沢市。

自分がいなければ、お里は幸せな人生を送れるだろう、
・・・そう考えて「南無阿弥陀仏」谷へ身を投げてしまいます。

c0196076_1052835.jpg

胸騒ぎがして戻ってきたお里。
沢市が身を投げたことを知って嘆き悲しみ、
自分も後を追って身を投げようとします。

c0196076_2273335.jpg

と、そこへ鴈九郎。
オレといっしょになれと迫りますが、すげなく拒絶され、
逆上してお里に襲いかかります。

c0196076_2274522.jpg

雁九郎の手を逃れて、お里が谷に身を投げると、
不思議な力によって辻堂へと引き寄られ、
鈴の綱が首に巻きつき・・・鴈九郎も息を引き取ります。

c0196076_11365839.jpg

鴈九郎の不思議な死に方を知った金貸し二人。

「悪いことをすれば、天罰が下るのはあたりまえ」

「あたりまえ、ったらあたりまえ」


「あたりまえ体操」
(笑)

このギャク、昨年の長浜でも使われていました(笑)

c0196076_2281100.jpg

谷底で倒れる二人のもとへ、
壷坂寺の本尊、十一面観音が現れます。

いかに沢市 承れ
汝 前生の業により盲目となったり

しかも両人ながら 今日に迫る命なれども
妻の貞心 または念ずる功徳にて
寿命を延ばし 与うべし

この上はいよいよ信心渇仰して
三十三カ所を巡礼なし 仏恩報謝なし奉れ

こりゃお里 お里 沢市 沢市・・・


c0196076_228191.jpg

気を取り戻した沢市とお里。

ええ あの・・・ほんにこりゃ眼が明いている
おお 眼が開いた 眼が開いた
観音様のお陰・・・有り難うござります
むむ・・そしてあの・・・
お前はまあ どなたじゃえ?

  どなたとは何ぞいの
  これ 私はお前の女房じゃわいな

ええ、あのお前がわしの女房かえ
これはしたり・・・初めてお目にかかります


c0196076_2284216.jpg

お礼申すや 神や仏
よろず見せ給ふは 
これひとえに観世音の
誓いの重きは 岩を建て
水をたたえて 壺阪の庭の
砂も浄土なるらん 御示し
有り難かりける 御法なり


c0196076_10471512.jpg

水上勉氏に『壺坂幻想』という短編小説があります。

壺坂寺に詣でることを宿願としながら、
果たせなかった盲目の祖母の死後、
「私」が鎮魂のために参詣する
・・・という自伝的な内容です。

その中に、沢市が使っていた杖の話が出てきます。

『壺坂霊験記』は、もちろん作り話ですが、
妻お里の日を欠かさぬ参詣祈祷によって、
不治の目があいたというこの話が
寺では参詣者にあたかも事実のように示され、
この杖に触れることによって、
病んだ目の治癒を願う人が後を絶たないのだ、と。

c0196076_2292118.jpg

『壺坂霊験記』は、明治時代に作られた浄瑠璃の演目(作者不詳)
歌舞伎、講談でも演じられますが、なんといっても、

妻は夫をいたわりつ、夫は妻に慕いつつ・・・

三つ違いいの兄さんと・・・


・・・といった、浪曲の名調子で一躍有名になります。

水上氏も、浪曲でこの物語に馴染みがある、
というようなことを書いていたと思いますが、
盲目だった祖母も、これを聞いて、いつかは壷坂寺へ・・・
と思いを募らせていたのでしょうか・・・。

水上氏の筆は淡々とすすみますが、とても切ない話です。

c0196076_230178.jpg

これが最後かと思うと、やはり淋しい・・・。

しかし、子供歌舞伎の役者は、
いくらお気に入りでも、ほとんどがその年限り。
こんなに長らく楽しませていただいけたのですから、
僥倖と思わなければなりませんね・・・。

ありがとう・・・。

これまで悲劇的な役柄ばかりでしたが、
最後の最後にハッピーエンドの物語。

団四郎師匠の粋なはからいでしょうか・・・。


c0196076_2302415.jpg

旭山の外題「伽羅先代荻 御殿の場 政岡忠義の段」


2日後の「後宴」にも、
仕事が終わってから駆けつけるつもりだったのですが、
その夜、台風が近畿直撃で断念・・・
けっきょく「宵宮」が見納めになってしまいました・・・。
トラックバックURL : http://gejideji.exblog.jp/tb/23227229
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
by dendoroubik | 2014-12-21 09:04 | ◇米原曳山まつり | Trackback | Comments(0)