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城端むぎや祭 2014 その2

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JR城端線の終着駅、城端駅から旧市街地の中心部へ向かう坂の途中に
街並み踊り会場のひとつ「出丸坂会場」があります。
他の会場のような由緒ある建造物はありませんが、
幔幕の向こうに、五箇山へ至る山並みが望める、スケール感に溢れたいい会場です。
四葉会さんと出丸町さんの演舞を拝見しました。




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   こきりこの竹は七寸五分じゃ 
      長いは袖のカナカイじゃ

   まどのサンサもデデレコデン
      はれのサンサもデデレコデン

四葉会さんによる、ご存知「こきりこ節」
現存する民謡で最古のものといわれ、音楽の授業で習った記憶のある方も多いのでは?
富山県出身の大学のサークルの先輩は酔うと必ず この歌か日本海みそのCMソングを歌ってましたっけ(笑)

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これも五箇山民謡のスタンダード「古代神」。
心中話をしている男女が蜂に刺され
あまりの痛さに「死ぬかと思った」というナンセンスな歌です(笑)
人差し指で蜂の刺す仕草をしながら
踊るところが多いのですが、四葉会さんは赤いタスキで踊るのが印象的です。

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五箇山は民謡の宝庫ですね。

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2年まえにも見せていただきましたが、四葉会さんの「お小夜節」とても好きです。
お小夜というのは、輪島生まれの女性の名。
金沢に遊女として身売りされた彼女は、ある事件がきっかけで
当時、加賀藩の流刑地だった五箇山へ流されます。
やがて、五箇山の青年と恋仲になり身ごもってしまったお小夜は
まわりに非が及ぶことを恐れ、庄川に身を投げ、自ら命を絶った
・・・という悲しいお話が伝わっています。

史実かどうかはわかりませんが、五箇山民謡には輪島から伝わった唄も多く
こういった運命を辿った女性が幾人かいて、輪島の唄や楽器を教えた
ということもあったかもしれないですね・・・。

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   心細いよ籠のり渡り 五箇の淋しさ 身にしみる

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実れば刈られる麦や菜種、実らぬさきに刈られる麻の侘しさよ・・・

壇ノ浦に敗れた平家一門。
五箇山に安住の地を得た一部の落人たちが、慣れない農作業の合間に
栄華を偲びつつ自らの悲しい運命を、麻の哀れさに託して唄ったものがこの唄。
・・・と、たいていの「麦や節」の紹介には、そう書かれています。
落人の詠嘆を想起される歌詞が当て嵌められるようになったのは
おそらく明治の末以降のことで、史実に反するとまではいわなくても
この説明はちょっと粉飾過多かもしれません。

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ただ、そんな史実の詮索よりも、この唄が、歌われるときに
その向こうに垣間見える風景に、誰もが心を打たれるのだと思います。
無常の風景のなかにいるのは、落魄してもなお逞しく生き抜く人の姿です。

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笠を頭の後ろへかざすこのポーズ以外、間断なく動いているむぎや踊りですが
よく見るとひとつの動作ごとにピタリと一瞬、静止しているのがわかります。
潔いほどキビキビとした動作のなかに、なぜか哀愁を感じ取ってしまうのが麦や踊り。
情緒纏綿とした越中おわら節と、潔さのなかに哀調を漂わせた麦や節とは
日本人の両極端の心性を表しているようも思えます。

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出丸町の皆さんの演舞です。

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音楽の授業で習ったときには思いませんでしたが
踊りとともに見ると、こきりこ節というのは、祝祭感に溢れた、とても楽しい曲ですね。

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女の子たちが踊る「四ツ竹節」とても可憐でした。

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街並み踊りで披露される曲は、町によってさまざまですが必ず演じられるのは、もちろん麦や節です。

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   麦や菜種は二年で刈るに 麻が刈らりょうか半土用に
   烏帽子狩衣脱ぎ打ち捨てて 今は越路の杣屋かな

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   心淋しや落ち行く道は 川の鳴瀬と鹿の声

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   鮎は瀬につく鳥ゃ木に止まる 人は情けの下に住む


(「その3」につづく)
by dendoroubik | 2014-09-26 18:49 | ◇城端むぎや祭 | Trackback | Comments(0)