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日本海の光の帯

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東北から北陸にかけての日本海沿岸には、巨大な灯篭神事がひしめいています。

灯籠行事自体は、日本各地でおこなわれていますが、
下北、津軽半島から能登半島にかけての密集度は、やはり特異なものだと思います。
まるで、日本海沿岸に光の帯が連なっているようです・・・



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五所川原市の立佞武多(たちねぷた)です。

大きいとは聞いていましたが、あまりの高さにド肝を抜かれてしまいました!
5階建てのビルの高さに相当するそうです。
日本海沿岸の灯籠行事は、幕末から明治にかけて巨大化していった、という共通の歴史があるようです。
北前船交易の隆盛と軌を一にしていますので、影響関係があったと考えるのが合理的ですね。

大正期から電線の施設によって、丈を詰めるようになったのも共通の歴史ですが
その高さこそが他のねぷたと一線を画する特色だった立佞武多は、やがて衰退してしまいます。

平成5年・・・
失われたとされていた立佞武多の設計図の一部がある民家から発見され、
3年後・・・ボランティアにより80年ぶりに復活。
駅前では電線の地中化などもすすめられて、ますます盛りあがりを見せているようです。

すばらしい!

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弘前ねぷたまつり

青森県にはねぶた(ねぷた)祭りが、大小あわせると40ほどもあるそうです。

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一方、能登半島には、キリコ(奉灯、アオカシ)が200近くもあるといいます。

(宇出津 あばれ祭り)

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両半島を繫ぐ沿岸部にも、広く名の知られた灯籠行事にこと欠きません。
その筆頭が、秋田の竿灯まつりでしょうか。

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富山の魚津 たてもん祭りは、どこか竿灯に似ています。

似ているのは竿の先に、提灯をたくさん吊るしているところだけ・・・と思われるかも知れません。

たしかに・・・

竿灯はたわわに稔った稲穂を、タテモンは帆船を模したものといわれます。
竿の先を掌や額、腰などに載せ、高々と夜空に差し上げる竿灯。
台座にソリを取りつけて曳きまわし、神社の本殿まえで回転させるタテモン。

様態も起源もまったく異なります。

直截的な影響関係はわかりませんが、
両者を見比べてみてると、やはり、同じ心性に基づく祭りだと感じました。
豊作と豊漁・・・祈りはちがっても、その祈りの捧げ方がとても似ていると思うのです。
なにより、ハイテンポで楽しげな、スウィングするようなお囃子の調子がそっくりでした!

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似ているといえば、富山県の砺波地方の夜高(よたか)あんどんは、ねぶたにとてもよく似ています。

砺波、福野、津沢などでおこなわれるこの行事のあんどんは
青森や五所川原のあんどんを思わせる形のものもありますが、
建物を模したものが多いように思いますので、能代のねぶながしと関係があるのかもしれません。

夜高あんどんでおもしろいのは、山車同士が激しくぶつかり合うイベントがあることです。

富山には、夜高に限らず、山車の突合せをおこなう行事が数多くありますので
これはこの地方に固有の特徴かと思っていましたが、
先日、太宰治の『津軽』を読み返していたら、昔は青森のねぶたまつりでも、
激しいぶつけ合いをしていた、とありました。

(津沢夜高(よたか)あんどん祭り) 

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日本海沿岸につづく光の帯も、なぜか能登半島の西側へゆくと途切れてゆきます・・・

(石崎奉灯祭)

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日本海沿岸で最大の北前船の寄港地、越前三国湊。

ここでおこなわれる三国祭の山車上の人形も
やはり、幕末から明治にかけて、北前船交易で富を築いた豪商らの手よって巨大化してゆきます。
が・・・もはや行燈ではありません・・・

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三国祭の人形は、どこか行燈人形の面影を残しているようにも思えましたが
敦賀まつりになると、むしろ、祇園祭の山鉾の山飾りのようです・・・


今年の三国祭の知り合った、ある映像作家の方から、
先日、福井にも、ねぶたに似た行事があることを教えていただきました。
40年ほどと歴史は浅く、規模もそれほど大きくないものだそうですが
これを興そうとされたのは故なきことではないでしょう。

そういった心性が、日本海側の他の巨大灯籠行事と通底するものなのかはわかりませんが
来年はぜひお伺いして、感じ取ってみたいと思います。
Commented by うずら at 2014-08-12 00:31 x
祭りも、時代によって流行もあったでしょうね。
そしてバブリーな人たちが、山車を大きく、豪華にしていくのかな。
それにしても、たちねぶた、ってすごいのがあるんですね!
というか、ねぶた祭りが40もあるって知らなかった。
知らないこといっぱい。一度行ったら、何度も足を運びたくなるでしょうね~
Commented by nararanran at 2014-08-12 11:32
こんにちは~

祭りの季節です。
富山で見たお祭りで山車がすれ違うときに
相手の山車を蹴ったりして面白かったのを思い出しました。
でも。。どこのお祭りやったか思い出せなくって。
見てるほうも危険やったけど(笑))

静か~な「風の盆」も私は好きですが
(今では観光客でごった返していますが)
喧嘩っ早いのも面白いですヽ(=´▽`=)ノ
Commented by yyama0525 at 2014-08-12 17:11
トップの写真とてもいいですね 
どこで撮られたんですか

日本海沿岸の光の帯
確かに そうですね

Commented by dendoroubik at 2014-08-12 17:52
☆うずらさん

五所川原の「たちねぷた館」を見た同僚が
「たちねぷたはスゴい!」と喧伝してましたが
「あんまり祭りを見たことがない人が言ってるだけ」
・・・と実は思ってました

しかし あれはホントにスゴかったです!

能登のキリコの200を制覇するには
100年くらいかかりそうですが(笑)
ねぶたの40なら
生きてるうちに見られないこともなさそうですね
でも あまりにも遠すぎて・・・

五所川原といえば 
太宰治と吉幾三の出身地
現在 とくにこれといった産業のないなかで
これだけのものを復活させた心意気に敬服です!
Commented by dendoroubik at 2014-08-12 18:03
☆らんさん

富山で見られた祭りというのは
たぶん福野の夜高まつりじゃないでしょうか
金沢からも近いですし・・・

夜高まつりの他にも自分が見た富山のまつりで
岩瀬曳山まつり 氷見祇園まつり 伏木曳山まつり
がケンカをおこなっていました

最初に見たのが氷見の祇園まつり
京都の祇園祭のイメージがあったので
突然山車のぶつけ合いがはじまったときには
「わ! なんちゅう野蛮なことを!」
と思ってしまいました(笑)

ふだんの人付き合いのなかでは柔和な富山の方々が
どうしてあんなアグレッシヴな祭りを好まれるのか
いまだに疑問です(笑)
Commented by dendoroubik at 2014-08-12 18:10
☆Capt.yamaさん

ありがとうございます!

トップは青森のねぶたまつりの写真です
回転しながら客席に近づいてくれますので
あんどん自体はよく見ることができます

どちらかといえばあんどんよりも
囃子方やハネトと呼ばれる踊り子などを見たかったのですが・・・

この他に弘前のねぷた 秋田の竿灯を見ることができました
夜の祭りですので 昼は心置きなく観光
しかし祭りの後の飲みすぎはよくありませんでした(笑)
Commented by 沙都 at 2014-08-16 14:47 x
青森のねぶた、弘前のねぷた。他、数カ所で行われるのは知っていましたが、
たちねぷたは知りませんでした。
5階のビルが動くのは圧巻ですね。

ハネトや黒カラスは青森・弘前以外でもあるのですか…
あおれと、ぶとぷの呼び名の違いって…
Commented by dendoroubik at 2014-08-16 17:27
☆沙都さん

めったなことでは驚くまいと五所川原に乗り込んだのですが
あの大きさは想像を遥かに越えていて
不覚にも「わっ!」と驚いてしまいました(笑)
でも 日程が合わずに 青森と弘前のみ
タチネプタが運行するところは見られませんでした

語源が「眠り流し」といわれますので
「nebuta」も「neputa」もその訛りといわれますね
青森が「bu」で弘前が「pu」といわれますが
これは1980年に重要無形民俗文化財に指定されたとき
それぞれそういう名称で登録されただけで
現地の人はそんなに厳密に区別しないそうです

「ラッセラー」の掛け声の青森ねぶたのハネトは有名ですが
あれは港町ならでは風習といわれますね
弘前の掛け声は「ヤーヤードー」で
あんまり飛び跳ねたりせず勇猛な感じでした
他を見てないのでわかりませんが
分布図を見ると沿岸部は「ラッセラー」
内陸部は「ヤーヤドー」という掛け声が多かったです
海側はちょっとヤンチャなのかもしれませんね
by dendoroubik | 2014-08-11 13:01 | ◆祭り | Trackback | Comments(8)