2013年 05月 03日
山之上のケンケト祭 その2
五月晴れの空に、ポーンと高く放り投げられる長刀。
「振り子」たちのの賛嘆の視線がその軌跡を追います・・・
「高い!」
裂帛の気合いには・・・
「えー声!」
・・・の合いの手。
ちょっとしくじっても・・・
「愛嬌! 愛嬌!」
いい祭りだなあ!
「ケンケト祭り」(国選択無形民俗文化財)も、
全国的な知名度はそれほど高くないと思いますが、
椎名誠氏の『ニッポンありゃまあお祭り紀行 ●春夏編』
に取りあげられていますので、
ご存じの方も多いかもしれません。
この祭りは、毎年5月3日、竜王町山之上と旧蒲生町宮川で
合同でおこなわれます。
かつて、尾州藩領だった山之上が旱魃で苦しんでいたとき、
宮川の人々が分水を融通したことから、友好関係ができ、
以来、合同で祭りをおこなうことになったそうです。
これは宮川の八坂神社。
午前9時頃におこなわれた神事のあとの風景です。
右手奥に立てかけられているのが、
この祭りの主役というべき「イナブロ(稲風呂)」。
サギの描かれた5メートルほどの大御幣です。
10時まえに、山之上の津島神社へ移動します。
この祭りは、東近江市の宮川から、竜王町の山之上の各神社を
かなり広範囲に渉って移動しながらおこなわれますので、
見物もけっこうたいへんです。
10時過ぎからおこなわれる西出の長刀振りを見にきたのですが、
同じ時刻に新村野神神社でも、同様の長刀振りの奉納があります。
小さな神社なので場所もわかりにくく、
集落内に車をとめるスペースがなかったりで、
たどり着くのにけちょっと手間取ってしまいました・・・。
長刀振りを奉納するのは、
山之上の11才~21才の青少年。
昔は長男のみが参加していたそうですが、
現在は人手不足などから、必ずしもそうではない
(・・・と、椎名氏の本にありました)
それにしても、カラフルな衣装です。
派手な友禅模様の着物に、カラフルな横ボーダーのスカート。
スカートの裾には、びっしりと小さな鈴か取りつけられていて、
動くたびに、涼しげな音が響きます。
背中には、おそらくお母さんのお手製らしい、
兜やコイノボリ、干支などのアップリケ。
ここにも鈴か取りつけられていています。
そもそもこの衣装は、織田信長の甲賀攻めの際、
これに加担した山之上の農兵の装束を模したものといわれます。
(諸説あり)
従軍した山之上の人々は多くの戦果を挙げ、
信長より恩賞を受けます。
これを記念してはじめられたのが、
長刀振りを奉納するこの祭りの起源であるといわれるそうです。
幼い順に長刀振りを披露しながら、
お宮さんへ練りこんでゆきます。
お宮さんのまえで鉢巻を取り、一礼。
最後尾の、鉦打ち2人、「オード」と呼ばれる鼓打ち、
それに振り子のカルテット。
「上がり役」と呼ばれる最年長、21歳の青年が務めます。
彼らか繰り出す、ちょっと道化たダンスがすばらしい!
かがんだり、伸びあがったり、すばやく回転したり・・・
何を表現しているのかわかりませんが、
繰り返されるその奇妙な動きに魅了されてしまいます。
祭りの中盤以降、イナブロという巨大御幣が登場すると、
そのまえでこのカルテットが踊ります。それもまた見物です。
彼らが打ち鳴らす鉦の音が「ケンケト」の名の由来でしょうか。
年少組のあとには、年長組が大技を披露します。
長刀のうえを跳びあがったり・・・
長刀をまわしながら、そのうえを跨いだり・・・
背中でまわしたり・・・
最後に、長刀を大空高く、放り投げます! お見事!
これが終わると、一行は次の長刀振りの奉納場所へ移動していきます。
途中、野神神社で長刀振りを奉納していた子供たちと合流。