米原曳山まつり 2012 その2

『義経千本桜 河連法眼館の場』

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大和の国に、千年巧経る夫婦の古キツネがいました。

このキツネが鳴くと、必ず雨が降る

・・・という言い伝えがあったそうです。

平安のはじめ、都を旱魃が襲ったときのこと。
雨乞いのためにこの夫婦キツネは野狩りして捕らえられ
生皮を剥いで、鼓にされてしまいます。
キツネの霊力か、これをポンと打つと
見事に雨が降った…と伝えられます。

「初音の鼓」と名づけられたこの鼓は
永らく宝物として宮中にありましたが、
白河法王はこれを義経に与えます。

もちろん、酔狂で与えたわけではありません。

 鼓の裏皮は義経 表皮は頼朝。 
 鼓を打て=頼朝を討て!

・・・という、ほのめかしですね。

あやふやな気持ちで鼓を受け取ってしまったことから
義経の悲劇がはじまります。

平家の娘を娶ったことを兄、頼朝に責められ、
卿の君は自害。
嫌疑をかけられた義経も都落ち。

吉野山に隠れたそんな義経のもとに、
愛妾、静御前が跡を追ってきます。

義経から託されていた「初音の鼓」をもって。

お供は家来の佐藤四郎兵衛忠信。
・・・実は、彼は生皮を剥がされて鼓にされた
夫婦キツネの一人息子のキツネ。

静御前の打つ鼓の音が
彼には父と母のやさしい呼び声に聞こえるのです。
恋しさのあまり忠信の姿にバケて吉野までお供してきたのでした・・・




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霊山吉野の河連法眼(かわつら ほうげん)というお坊さんの家。

ここにかくまわれている義経。
己が境涯を詠嘆するところから芝居はスタートします。

そこへ静御前が到着したという報告が入ります。

家来の佐藤四郎兵衛忠信もいっしょだ
・・・と聞いて義経は訝ります。

佐藤忠信は、さきほどすでに単独で到着しています。
なぜ、静御前といっしょではないのかと詮議していたところでした。

忠信がふたり現れるとは面妖な!
これには仔細があるにちがいない!

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 ところで、静御前。
 忠信にどこかおかしなところはなかったか?

そういえば・・・と語りだす静御前。

 わたしが寂しさを紛らすために、
 義経殿から預かった「初音の鼓」を打つと
 不思議なことに、必ずどこからともなく忠信が現れるのです。
 あまりに頻繁なことなので、どこかおかしい
 ・・・と常々感じていたのです・・・

 よし。鼓で忠信を呼び出して詮議いたせ・・・・

義経は静御前に懐刀を手渡し、退室します。

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ポン、ポン、ポン・・・と鼓を打つ静御前。

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舞台上の階段から突如、現れる忠信。

これが最初の「しかけ」です。

忠信狐が現れたり・消えたりする
この「しかけ」がこの芝居の見所のひとつです。

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静御前の詮議にシラを切ろうとする忠信。

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さては・・・と切りかかろうとする静御前に、
実は・・・と忠信は身の上話をはじめます。

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実はわたしは、この鼓にされた
夫婦キツネの一人息子。

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静御前様が鼓を打つたびに、
その音が父、母のやさしい呼び声にも聞こえ、
恋しさのあまり忠信殿にバケてついてきたのです。

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・・・と、白いキツネに早変わり。

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訥々と身の上話をはじめます。

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忠信様を霊力で遠ざけ、
自分が静様をお守りするつもりでした。

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しかし、ホンモノの忠信様が現れたとなっては、
これ以上お供するのはご迷惑・・・

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 「お聞きになられましたか?」

 「おお、聞いた」

奥の間に控えていた義経がふたたび登場します。

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忠信ギツネは姿を消してしまいます。

この石灯篭に消えていく「しかけ」も楽しい^-^

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 「それにしても、不憫なキツネ。
 いまいちど、呼び戻してやれ」

静は鼓を打ちます。

・・・が、打てども打てでも、もう鼓は音を出しません。

 「霊力が消え失せたか・・・」

 「鼓がなくとも、呼び戻す術を心得ております」

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静は硯と筆をもって、襖に文字をしたためはじめます。

 静が心 知るや知らずや

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心が通じた…ということでしょうか、
襖がくるんと回転して忠信キツネが現れます。

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 子供のころ親と死に別れた自分は、
 親孝行というものをした覚えがありません。
 それが悲しくて、そして恥ずかしいのです。
 せめて鼓の近くにいて親のために・・・
 そして鼓を持つ義経様ののためにお役に立ちたい・・・

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忠信キツネの述懐に、義経は打たれます。
思えば、義経もまた、幼少のころに父、義朝を失い、
親孝行をした覚えがありません。
父の代わりにとも慕い、仕えていた兄、頼朝には疎まれ、
いまは命さえ狙われる身の上。
孝行心に感心した義経は、
初音の鼓をキツネ忠信に与えるのでした。

(鼓を与える・・・という行為は、
おそらく義経が世俗的な権力に背を向けたことを
象徴的に表しているのでしょう。
義経には、もうこの先、平泉での死・・・しか待っていません・・・)

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駿河次郎が、義経へ忠誠を誓っています。
それを影で見ていたキツネ忠信は、
姿は消しても、きっと義経をお守りす
・・・そう心に誓って去っていきます。

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吉野の山に、ふたりの荒法師がやってきます。

敵方の覚範が寄越した討っ手です。

どこかユーモラスな立ち居振る舞い。
義経を討つように命じられているらしいのですが、
ちょっと弱腰です。

 「義経には強い家来がたくさんいるらしい」

 「いちばんは、つるつる頭の武蔵坊」

 「忠信という家来は強いのか」

 「これが強い。めっちゃ強い」

 「ワイルドだな~」(笑)

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そこに現れたのがキツネ忠信。

義経を狙う荒法師の追っ手のまえに立ちはだかります。

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妖術を使っての立ち回りは、とてもファンダジー!

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本来なら、荒法師を退治してしまうのですが、
この芝居では決着がつくまえに、
ふいにキツネ忠信が「さらば!」と叫んで、幕。

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いやー、おもしろかったです。

夜の部で見たら、もっと妖艶さが増したんでしょうね・・・
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Commented by うずら at 2012-10-11 21:46 x
なるほど、そういうお話やったんですね(笑)
7日の15時の回、子どもたちは堂々とした演技でしたよ。
始まる前、終わった後の、子どもたちが素に戻った時が、
なんとも微笑ましかったですね~
舞台に近いという雰囲気が良いですね。
また、夜の部を見てみたいなって思いました~。
ホンマに!
Commented by dendoroubik at 2012-10-12 09:28
☆うずらさん

「山を見るなら長浜 芸を見るなら米原…といわれています」
米原曳山の紹介に そんなことが書いていますね
おそらく そんなことをいうのは 米原だけでしょうけど(^-^;
たしかに 公演回数が多いので 子供たちがノッてくるというのはあるのでしょうね
米原の夜の公演は一度しか見たことがないのですが
長浜や小松の子供歌舞伎も 夜になってくると ちょっと神がかってくるよう…
見ていて ゾクッとしますね(^O^)

それにしても 米原の観衆の少なさは いたたまれないですね
来年は いっしょに友人も連れて応援に行きましょう!
by dendoroubik | 2012-10-11 07:00 | ◇米原曳山まつり | Trackback | Comments(2)