2012年 05月 10日
近江八幡 篠田の花火
5月4日の夜、近江八幡市上田の篠田神社境内で、
日本古来の製法による花火(「和火」)の奉納がありました。
100畳ほどの大きさの杉の板に仕掛けられた
ミョウバンと硫黄の薬剤が青く妖しく燃えます。
闇に浮かびあがった今年の絵柄は「アメノウズメ命」。
でも、なぜ「アメノウズメ」・・・?
見物客は誰しもそう思ったでしょう・・・
というより、一目で「アメノウズメ」だと
見抜いた人は少なかったのでは。
僕も「弁天さんかな?」と思いました。
アナウンスによると
「アメノウズメは浪を鎮める神といわれます。
東日本大震災と大津波による被災者を鎮魂し、
いつまでも忘れない」
そういう祈りが込められているのだそうです。
アメノウズメといえば 「天の岩戸開き」 でお馴染みですね。
弟スサノヲの傍若無人な振る舞いに怒ったアマテラスは
天の岩戸に引きこもってしまいます。
太陽神であるアマテラスが隠れてしまったので
高天原も葦原中国も闇となり、さまざまな禍がおこります。
なんとかアマテラスに出てきてもらおうと
八百万の神々は一計を案じ、
アメノウズメがちょっと卑猥なダンスを踊ります。
八百万の神々は大爆笑。
「自分が岩戸にこもって世界が闇になっているというのに、
なぜ、八百万の神々は笑っているのか」
不審に思ったアマテラスが尋ねます。
「あなたより貴い神が現れたので、みんな喜んでいるのです」
というアメノウズメの答えに、
どんな神が現れたのかと
アマテラスが岩戸をすこし開けたスキに、
アメノタヂカラオがその手を取って
岩戸の外へ引きずり出すことに成功。
世界に光が戻った・・・という日本神話。
「光にあふれた新しい時代の扉をあける・・・
そんな願いも込められています」
とアナウンスがありました。
この花火技術は他では見られない
篠田独自のものだそうで、
正確な起源は不明とのことですが、
江戸時代の中期頃、雨乞いの返礼として
御用硝石でつくった花火を奉納したのがはじまりといわれます。
でも、なぜ花火が奉納されるようになったのでしょうか・・・?
江戸時代、上田の農家は副業として
火薬の製造に不可欠な硝石づくりをしていたそうです。
そういえば、近江・国友鉄砲の歴史はとみに有名ですが、
火薬の製造がどこでおこなわれていたかは、
あまり知られていませんね。
これは火薬の製造自体が
軍事上の機密であったことが原因ともいわれます。
また、たいへんな危険をともなうことから
口伝のみで伝承されることが多く、
そのことが火薬づくりの歴史の表舞台に
登場しない理由だとも考えられます。
硝石づくりの長い歴史と火薬調合の工夫が、
篠田の花火奉納のバックボーンにあるのですね。
篠田神社の春の祭りは
3日の若宮祭、4日の宵宮、5日の例祭と3日間つづくそうですが、
4日の宵宮の花火と松明の奉納がたいへん珍しく、
かつダイナミクで人気があり
「篠田の花火」として、独立した行事のように呼び慣わされています。
午後5時頃、各集落から松明に先導されて太鼓が渡ってきます。
つぎつぎに宮入りする様子も、たいへん神秘的です。
太鼓の宮入りが済むと、打ち上げ花火の奉納です。
2年まえに見物したときは、信州の仕掛け花火「大三国」や
三河の「手筒花火」なんかもあったのですが、
今年はなくちょっと残念でした・・・
打ち上げ花火と同時に、
提灯を取りつけた大松明が若衆に担がれて宮入りします。
打ち上げ花火が上がっているあいだ中、
御輿のように担ぎわまわれます。
全国の煙火店から取り寄せられた
3~7号の花火34発が夜空を焦がします。
神社でもらったプログラムによると、
福島、静岡、中華人民共和国、秋田、長野、
静岡、三重、埼玉、東京、新潟、滋賀、
それに「東日本被災応援 特別取り寄せ」として、
宮城の7号玉4発も打ちあげられました。
「10号玉の打ち上げを止められました。
ご用意いただいた煙火業者の方、
ご寄付を予定いただいた方々にはお詫び申し上げます」
とありました。
消防署からの止められたのでしょうか・・・
つづいて仕掛け花火。
櫓から「綱火」と呼ばれる
ロケット花火が発射され、点火します。
今年の絵柄は「東京スカイツリー(笑)と金環食」
真っ赤な太陽が・・・
やがて月に隠れる様子が花火で表現されていきます。
仕掛け花火が消えると、
すかさずナイヤガラに点火されます。
このあたりは、もう息もつかせぬ展開です。
夏の終わりの花火は儚げですが、
春の花火はどこかしら妖しげな魅力があります
・・・といっても、春に花火をあげるところもあまりありませんが^-^;
ここが神社の境内であることを忘れてしまう美しさです。
いよいよ「和火」に点火されます。
櫓から「綱火」が放たれ・・・
点火!
100畳の板全体が、
耳をつんざく爆音を轟かせて燃えあがります。
篠田の花火は2度目ですが、
やはりこれには度肝を抜かれてしまいます。
失敗して暴発してしまったんじゃないか
と思うくらいのアナーキーな爆裂ぶりです。
爆発がおさまると、くるくるまわる廻り火や、
天に向かう乱れ玉があらわれます。
やがてそれらもおさまると、
杉板のうえに青い蛍火のように
絵柄が静かに浮かびあがっていきます。
先ほどの爆音から一転、
見物人の息を呑む音や感嘆のため息、
ざわめきのなかで数分間燃えつづける「和火」・・・
幻想的です。
いったい、こんなファンキーな演出を、
誰が考えたのでしょうか?
和火が消えかかると、大松明に点火されます。
火の粉をあびる観客の写真とか面白いなぁって。
火の粉の一粒一粒が見えるし、すごい。
どこで見るのがいいのかようわからんかったけど、
和火は独特の雰囲気で、これも面白いですね。
また行きたいです~
篠田の花火はやっぱりおもしろいですねえ!
僕も滋賀に来てはじめて知ったのですが なぜこんなおもしろいものが全国的に知られていないのか不思議で仕方ありません
でも 知られていないからこそ 存続してるのかもしれないですね
当局のお達しでどんどん規模かま縮小されているみたいですが
いま以上 見物人が押し寄せると たぶん中止せざるを得なくなるのだと思います